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Misato 82
好きな人に抱きしめられて眠るって、なんて幸せなんだろう。
毎日抱かれて眠りたい。
しかも朝はすごく優しく起こしてくれる。
あったかい大きな手のひらが触れて、頬や額や唇に柔らかく口付けて、低く甘い声で名前を呼んでくれる。
起きるのがもったいないくらい心地よくて、でも早く慎を見たくて目を開けたら、蕩けるような笑顔でオレを見てた。
どうしよう…
す…っごい幸せだ…っ
映画館はまあまあ混んでて、4人並びの席は取れなかった。
でも前後で2席ずつ取れたから、まぁいっか、って感じで、慎が絢一と大田に「前行け」って言ってるのを、なんでかなって思いながら聞いてた。
けど、すぐ分かった。
上映のブザーが鳴って辺りが暗くなってきたら、慎がスッと手を伸ばしてきた。その手に自分の手を重ねる。それから、ちょっと慎の方に身体を寄せた。慎もオレの方に寄ってきてる。
真後ろに絢一たちがいたら、こんなことできない。
慎の長い指を握ったり、指と指を絡めたりしながら映画を観た。
派手なケンカのシーンでついビクッとしたら、慎がしっかりと手を握ってくれて嬉しかった。
「あー、おもしろかった、腹減ったー」
映画が終わってホールを出たら、大田が伸びをしながら言った。
「だなー。何食う?」
慎がみんなにそう言いながらオレを見た。気にかけてくれるの、嬉しい。
「オレ、麺類がいい」
「麺なー。ラーメン、パスタ、うどん、あたりか?」
絢一がスマホを出して操作し始めた。
「あ、待て橋本。あそこに4人組の女子がいる」
え?
「ほら、おれらも4人じゃん? 女子って3人組が多いのにさ、4人って珍しいし、しかも可愛いぞ。声、声かけよーぜ!」
大田が少し離れた所にいるその4人組の女の子たちをチラチラ見ながら、声を潜めてそんなことを言う。
確かに女の子は3人組が多いって、オレも思うけど。
「な、間宮、行ってくんねぇ?」
え?! え?! 慎?!
「てかほら、向こうもこっち見てるしさ」
やめてやめてやめてっ
「間宮が行けばぜってぇオッケーだか…」
「俺さ」
慎の声が少し強めに響いた。
「好きな子いるからナンパはしないから」
あ…っ
思わず慎を見上げた。
好きな子いるから…って言った…っ
「え?!」
大田が驚いた声を上げた。
やばいっちょっと…っ
うれしい…っ
でも喜んでるのは友達の反応としてはおかしい。
だけど顔がにやにやしちゃう。
俯いて、笑いそうになるのを唇を噛んでなるべく耐えて、ちらっと慎を見上げた。慎はなんでもないような顔をしてて、ちょっとだけオレを見た。
…慎、ほんの少し顔赤い
「え、え、え。じゃ、なんで告んねーの間宮! 間宮だったらぜってぇオッケーもらえるだろ」
うん、オッケーしたよ
「つか誰誰誰?!」
オレ
でもまあ、言えないんだけど…
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