永遠の夏

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遠く向こう。 夕暮れの太陽が、先週は沖に浮かぶ島の影に沈んでいたのに、今日は島の陰から出て、水平線に向かって沈んでいく。 ここ数日が忙しなく過ぎたため気付かなかったけど、少し前まで夜8時近くまで明るかったはずなのに、今日はもうこの時間には薄暗く、海岸沿いの道路に街灯が灯りはじめた。 「俺、まだ真優(まゆ)と夏らしいこと、まだ何もしてないのに…」 真優と夏祭りにも行ってないから、真優が今年のために新調したという浴衣も見ていないし、一緒に行くつもりだった花火大会にも行けていない。 今年の春、「暖かくなったらキャンプに行こう」って言っていたにも関わらず、それもできていない。 ランタンの灯りと焚き火の灯りにに照らされながら夢を語り合ったり、二人の将来を話し合ったり…。 俺の独りよがりかもしれないけど、そんなことも考えたのに。 何一つ実現できなかった。 俺と真優は会社の同期。 真優はいつでもどんな時でもニコニコと明るく、俺にとってまるで太陽みたいな存在。 その笑顔を見るだけで癒され、辛い仕事も頑張れる。 出会ってからいろいろあったけど、誰がなんと言おうと、真優は俺の彼女。 この夏は、いろんなとこに一緒に行こう。 そう、約束してたのに…。 夕日が水平線に沈み、しばらく残っていた残光も吸い込まれるかのように水中に消え、いつしか辺りは真っ暗になっていた。 俺はスマホを取り出し、メッセージアプリのリストをしばらく眺めて逡巡したあと、真優のアカウントをタップしメッセージを送る。 「今度、海を見に行かないか」 考えて打ち込んだ文章を何度も消してはまた打ち直し、最終的に送ったメッセージはたったそれだけ。 でも当然の如く、返信はない。 既読にもならない。 「なんでだよ…。 なんで俺のこと無視すんだよ。 もう会えないって、約束が違うじゃねーかよ」
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