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動物園は、どの場所も『高』と『低』の二つに分かれている。私はマップを頼りに犬のエリアへと向かった。唸り声のする低エリアの横を通り過ぎ、高エリアで立ち止まった。
「イブ〜?イブいる〜?あ。ねぇ!あなた!イブって知らない?」
私は足元に寄ってきた犬に話しかけた。犬はじっと私を見つめると奥へと走っていった。
しばらくすると、リンリンと鈴の音をさせながら茶色のトイプードルが私の方へ近寄ってきた。間違いない。イブだ。イブは私を見ると驚いた様子を見せキャンキャンと吠えた。鳴き声は次第に言葉へと変化する。
「どうしてここにいるの!?何かあったの!?」
「やっぱりここにいたー!イブは絶対ここにいると思ったんだよね!いやー…少し前から来てみたいと思ってたんだよ実はー!びっくりした?」
「びっくりしたなんてもんじゃないよ!ボクだって会いたかった。でも――」
私はイブの言葉を遮った。
「それならいいじゃない!ところでアヤメもいたりする?どのあたり――」
「気にしてくれるのは嬉しいけど!ここにいるってことが、どういうことか分かってるの!?」
訴えているイブの高い声は私の耳にキンキンと響いた。
「声が大きいよ。分かってる。ちゃんと手続きしたって。引越したかったし、会えるかもって思ったら嬉しくなっちゃったんだもん」
イブは尻尾を下げて黙ってしまった。唖然としているのかもしれない。
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