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……ねぇ、もうすぐ夏が終わっちゃうんだよ
2023の夏はもう、二度と、来ないの……
そんな当たり前なことに気付き、あたしは少しオロオロしていた。
そんなときは決まって何かがあたしに追い打ちをかける。そうそれは突然、雨が降ってきたのだ。あたしは家へと急いだ。
その途中、軒下の隙間のようなところで抱き合っている男女がいた。ほんの一瞬、あたしはガン見する。だって口づけしていたから……
……一生、そうやっていろ。このリア充め!
あたしは嫉妬混じりに、乱暴な祝福を投げかける。
……あ〜ぁ、おかげで服がビチョビチョだ
濡れた服にピッタリ抱擁されていた。首すじが髪に舐め回されている。
……早くシャワー浴びよう
そう考えながら、素っ裸になった自分が乾いたタオルケットに抱かれている姿を想像していた。あたしは胸の前で両手をクロスさせ、掌で肩の先端を掴む。そうしてギュッと、自分の心を抱きしめていた。
……夏、本当にこれで終わっちゃうのかな……
そんなことを考えながら。
(終)
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