その友情と性は造花

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「あ、真央ちゃーん」 私に気づいたルイちゃんがそう言って大きく手を振る。 見た目のイメージより少し低めのその声でハッと我に返ると、私は小走りで彼女の元へ駆け寄る。 「もう、遅いよ真央ちゃん。僕待ちくたびれちゃった」 少し拗ねたような口調でルイちゃんが言う。 先程の神秘的な雰囲気とは違い、喋ると可愛らしい印象になるのだから本当にずるい。 「ごめんごめん、ちょっと用事があって…」 そう言うと、ルイちゃんは面白くなさそうに眉をひそめる。 「ねぇ、それって僕との約束よりも大事なこと?」 「はは、まさか。私にはこんな可愛いルイちゃんがいるのに、それ以上に大事なことなんてあるわけないでしょ?」 そう言えば、ルイちゃんの口元は満足そうに美しい弧を描く。 「うん…そうだよね。僕も真央ちゃん以上に大事なことなんてないよ。だから今日もね、早く真央ちゃんに会いたなぁって思ってたら、同じクラスの男子が代わりに掃除当番引き受けてくれるって言うからお願いしちゃった」 「……へー、そっか。あ、そういえば今日行くお店って電車乗らなきゃだよね?早く行こう」 「うん、楽しみだね」 今日はルイちゃんと隣町に新しく出来たスイーツバイキングのお店ヘ行く約束をしていた為、私達は駅に向かい歩き始める。 可愛いものと甘いものに目がない私達は、休日や放課後になるとよくこうしてスイーツ巡りをしているのだ。 「ねぇ真央ちゃん、今度ここ行ってみない?」 駅までの道中、そう言ってルイちゃんがスマホの画面を見せてきた。 「えぇ?今からスイーツ食べに行くのにもう次行くとこ探したの?」 少し呆れつつも画面をのぞき込む。するとそこには、ふわふわのホイップクリームで周りをデコレーションされた、ウサギ型のパンケーキが写っていた。 「わぁ!可愛い…!」 あまりにも愛らしいその姿に思わず声が出る。 「だよね!絶対真央ちゃん好きだと思った。これ、今月限定のメニューなんだって。次はここ行こうよ」 ルイちゃんはそう言って、嬉しそうに目を輝かせる。 (ものすごく行きたい!けど…) 正直な所、今は金欠気味であまり散財できない状態だ。 いくらウサギのパンケーキが甘く可愛らしくても、決して可愛いとは言えないその金額をいつでもポンと払えるほど、女子高生の金銭事情は甘くないのだ。 「ごめんルイちゃん、実は今月ちょっとお金ピンチで…」 仕方なくそう断るが、ルイちゃんは食い下がる。 「じゃあ僕が出すから」 「え?いや、いいよ!そんな悪いし…」 「大丈夫。僕が真央ちゃんと行きたいだけなんだから気にしなくて良いよ」 「でも…」 私が渋っていると、ルイちゃんは顔の前で両手を合わせて言った。 「ね、真央ちゃんお願い。一緒に行こ?僕、真央ちゃんと一緒じゃなきゃやだ。どこ行ったって楽しくないよ…」 長いまつ毛の奥の黒目がちな瞳が、うるうると懇願するように私を見つめる。 「うぅ…、わかった、わかったから!いいよ、じゃあ来週の土曜に一緒に行こう」 「ほんと…?やった、ありがと!真央ちゃん大好き!」 そう言ってふわっと笑ったルイちゃんは、天使なんじゃないかと思うほど可愛くて…その笑顔がまた少し、私の胸をチクリとさせる。 (ああ可愛い。本当に可愛い。本当…… 『男の子』とは思えないな)
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