その友情と性は造花

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恥ずかしさを誤魔化すため更にケーキにがっつく私を見て、照れることないのに、と、ルイちゃんはまた可愛く笑った。 そんな何の変哲もない私たちの…いや、ルイちゃんの日常の一コマ。 そんな何気ない瞬間でさえ、彼女には店中の視線が注がれる。 「ヤバっ!あの左の子、めっちゃ可愛くない?!」 「えー誰だろ?芸能人?」 いつからだろう。コソコソとしか聞こえないはずのルイちゃんへの賞賛の声が、こんなにも鮮明に聞こえるようになったのは。 可愛い、綺麗、美人。 ルイちゃんといるとそんな言葉を毎日のように耳にするから、学校でも街中でも、常に誰かしらに視線を向けられているのがよくわかる。 でもその視線は全て、結局はルイちゃんだけに向けられたものだ。 だから時々怖くなる。こんなに視線を感じているのに、その目がどれひとつとして私を写していないことが。 輝くような美貌を持つルイちゃんの隣で、私は引き立て役としての認知すらしてもらえてないことが。 そう、例えるならば透明人間。 ちゃんとそこにいるはずなのに、その存在が誰にも視認されていないような感覚。 「真央ちゃん?ねぇ、聞いてる?」 「…っ、あ、ごめんごめん!」 名前を呼ばれ、慌てて視線をルイちゃんの方へと戻す。 「大丈夫?具合悪いの?」 そう言ってルイちゃんは、心配そうに私の顔を覗き込んだ。 「全然大丈夫だよ。あ、そうだ…」 私はふと、あの連絡先の書かれた紙の事を思い出し、徐に鞄からそれを取り出し言った。 「これ、今日の放課後男の子に呼び出されてさ、一年生かな?ルイちゃんに連絡先渡してくださいって言われて。」 はい、と紙を差し出すと、ルイちゃんはただ黙ってそれを受け取った。 そして。 ビリッ、ビリビリビリ!! 、それを破り始めた。 無表情のまま、何度も何度も細かく引きちぎって。 「…はは、本当容赦ないね。あの子、それ渡す時すごく緊張してたよ?顔真っ赤にしてさ。」 私がそう言うと、紙を破るルイちゃんの手がピタリと止まる。 「うちの学年でも結構かっこいい〜って噂になってる子だったんだよ。いいの?本当に。」 「...付き合って欲しかった?」 無表情のまま、そう問いかけた彼女に対し、私は首を横に振って言った。 「やだ。ルイちゃん、彼氏が出来ると全然私に構ってくれなくなるんだもん」 するとルイちゃんは笑った。さっきまであんな残酷なことをしてたのがまるで嘘みたいに、心底嬉しそうな、愛らしい笑顔で。 「あははっ!大丈夫だよ、真央ちゃん。真央ちゃんが嫌がるなら、僕もう誰かと付き合ったりなんてしないよ?」 その証拠にほら、と、ルイちゃんはすっかり小さくなってしまった紙切れの山を指さす。 「僕、どんな男の人に何を貰っても、必ず真央ちゃんの目の前でゴミにしてきたでしょ?これは僕なりの真央ちゃんへの誠意なんだよ。あの時、真央ちゃんの事とっても悲しませちゃったから。だから、心配しないで。」 「…うん。」 私を優しく見つめるルイちゃんの目に、堪らない安堵を覚える。 ああ、ルイちゃんだけは、こうして私を見てくれる。 透明人間の私を、こうして視認してくれる。 それどころか、私を不安にさせない為なら人の恋心さえも簡単に踏み潰してしまえる。 私はそんなルイちゃんの事が 「ありがとうルイちゃん、大好き。」 大好きで、大嫌いだ。
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