発見(みつか)ることは、幸か不幸か

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 数日後、警察署長が新聞記者を引き連れ店に来訪した。警察署長は現金一千万円の入った風呂敷を小脇に抱えていた。 ママは懸賞金の一千万円を受け取った。新聞記者は厭らしくも、その一千万円の使い道について尋ねてきた。ここで素直に借金返済と答えるのも、それこそ嫌味だ。曖昧な玉虫色の答えで誤魔化すことにした。「まだ、これから考えます」と。  更に数日後…… 店の電話が引っ切り無しに鳴るようになった。電話の内容は「懸賞金目当てに客を売った恥知らず」「客商売の人間が客を売るな」「銭ゲバ女!」「ツチノコでも見つけたつもりか?」などと言った通報を非難するものばかりであった。絶えず鳴る電話を前にノイローゼになったママは電話線(モジュラージャック)を外したのだが、今度は直接店に攻撃されるようになってしまった。嘘の予約を入れられての無断キャンセル、店前にゴミを捨てられたり、玄関への投石、郵便受けには誹謗中傷の手紙がギッシリと…… ママはすっかり精神的に追い込まれ、借金を返さず一千万円を慈善団体に寄付することにした。その記事が地元新聞に載った瞬間に非難の電話も店への嫌がらせもピタッと止まり、ママに対する称賛の声で溢れるようになった。 誹謗中傷したかと思えば、今度は掌返しでの称賛…… 呆れるばかりである。  その原因であるが、ママが一千万円を得たと言う新聞記事を見た「誰か」がSNS上に気に入らないと書き込んだことが切掛である。ママの事情も知らずに「客商売の人間は『三猿』であれ」と考える人間が面白半分に同意し、かつてのママを知る者や、若い地元民が面白半分でママの店の情報を書き込み、ネットも現実(リアル)も巻き込んだ炎上に繋がったのだった。 指名手配犯を発見したママの記事を発見した「誰か」の悪意に晒されたことは不幸としか言いようがない……                            おわり
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