発見(みつか)ることは、幸か不幸か

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 ママの店に予約が入った。地元の県会議員からの予約である。 ママは「本日貸切」の貼り紙を玄関に貼り付け、他の客を入れないようにした。 夜になり、地元の県会議員が店に来訪した。同行者は地元の警察署長である。  二人は会食の場で「何か」を話していた。話の内容であるが「次の選挙で選挙違反をすると思うが見逃して欲しい」「愛人の店へのガサ入れを止めて欲しい」「県警の来年度予算を上げて欲しい」などと言った「不正」たるものだった。  ママはホステス時代から「見ざる」「言わざる」「聞かざる」の「三猿」を身に着けており、どんな話を聞いたとしても動ずることはなかった。 この二人に限らず、ママの店で「外には聞かせられない話」をする時には予め確認をとる「今から話すことは他言無用だよ」と。 ママは決まって返す「あたしは壁です。ホステスを辞めた身ではありますが、御法度は生涯守る気概がございます」と。  ママが元々は一流ネオン街のホステスであったことは周知の事実。常連客の中で「地位」のある者は、そんなホステスの御法度を身につけたママを信用して密談の場として、この割烹を利用するのであった。 もしも、ママが「これまで聞いた話」を外に漏らすことがあれば、地位のある常連客は「地位を失う」だけならまだ幸せな方、悪い場合は「塀の中」に直送、最悪の場合は鬼籍に入ることもあるだろう。
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