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握手会の参加券を握り締めヒカリの代わりにステージに上がろうとしたら、田母神に止められた。
「ちょっと君。まわりの客から五月蝿い。迷惑だって苦情が来ているんですよ。さっさと出ていってくれませんか?」
スタッフと警備員がヒカリを会場から追い出そうとしていた。そのときだった。
「それならそうとCDを買う前に言ってくれないと。ヒカリくんは朝一番で、握手券がついた新曲のCDを買うために並んでいたんですよ。ヒカリくんもミサトもまわりに迷惑をかけるくらい大きな声では話してないでしょう。耳、大丈夫?聞こえてる?」
助け船を出してくれたのは大学の同期の南原麻季だった。子どもを四人連れていた。
「ほら、みんな。パパがいたよ~~」
麻季の言葉に一斉に走り出す子どもたち。向かった先は田母神のところだった。
アタシは参加券を一番上の男の子、6歳くらいかな?に笑顔で渡した。
「パパが大、大、大好きなみみりんに会っておいで」とひと言付け加えて。
男の子はステージに上がると、順番にうねめ小町のメンバーと握手し、最後に幸予の前に立った。握手をしようとした幸予の手をぴしゃりと払うと、
「おねえちゃん、パパをママにかえして」
これだけ大勢の人がいるのに男の子は毅然とした態度で幸予を睨み付けた。
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