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「本当は、私猫みたいに……一人でいる方が好きなの。給食の一人で食べたいし、休み時間も一人でお絵かきしたり本読んだりしてたいんだよね。でも、そういうことしてると教室で孤立するわけ。グループワークとか、修学旅行とか?そういうので班決める時……どこにも入れて貰えなくて苦労すんの。席替えもさ。先生が全部決めてくれれば楽なのに、なんでそうしてくれないんだろうね」
小学校の時から、こういう柵に悩まされてきたのだ。
友達付き合いが極端に下手な子がどうなるのか、今まで散々見てきている。一人でいるのが好きで、教室で本ばかり読んでいたような子は――席替えやグループワークで“仲の良い人同士で組んで”と言われた時、声をかける相手がいなくて教室でぽつんとなってしまうのだ。そして、どうしようもなくて黙って涙をこぼしている。最後は困り果てた先生が頼み込んで、どこかのグループに入れてもらうということをする始末。あの惨めさといったらない。自分は絶対ああなりたくない、と常々私は思っていたのだ。
だから本当は面倒くさくて嫌なのに、適当な女子のグループに入れてもらっている。彼女達に遊びに誘われたら基本は一緒に行くし、食事も一緒に食べる。休み時間もおしゃべりに興ずる。それら全てが面倒くさくて、疲れて仕方ないのに。彼女らの機嫌を損ねないように損ねないように、毎日無理やり笑顔を作って付き合っているのだ。
グループワークや班分けの時に、孤立しないために。
誰にも声をかける相手がいない、友達がいない独りぼっちの人間だと周りに思われないために。
「人間、なんで誰かと足並み揃えて、へらへら作り笑いして生きていかなきゃいけないんだろ。学校ってマジ、なんのためにあるんだろうね。……社会生活を学ぶため?協調性を知るため?人の顔色伺ってストレス溜めながら頑張るってのが協調性なら、私そんなのおかしいって思うんだけど……」
はあ、とため息をつく。ぽんたろーは振り返らないが、耳がぴくぴく動いている。一応、話は聞いてくれているのだろうか。
特に実のある時間ではなかったが。それでも彼相手に吐き出したら、少しだけすっきりしたのも事実だ。
「……聞いてくれてありがとね、ぽんたろー。あんたも早く寝なよ」
私は立ち上がると。月明かりの中、ぽんたろーはもう一度だけ振り返ったのだった。相変わらずの、蒼い宝石のような瞳で。
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