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そのままじぃっと見つめていると、澄生の視線が戻ってきて。
「……ファン、なんだろうって言われて」
「え? ふぁん?」
ふぁん、と澄生の発音を繰り返してみたけれど、あまりに私と澄生の間にそぐわない言葉だったから、すぐには意味がわからなくて。
「あの2人の中で、俺は……、月城亜緒の大ファンってことになってる」
「えぇ?! な、なんで?!」
もう一度聞いて、やっと理解できた。
ふぁん……、ってファンってこと?!
どうしてそんなことになっているのか驚いて目を見開くと、澄生はまた視線を彷徨わせてしまうから。
あ、困らせてる……。
また私のせいで、澄生が揶揄われたりして嫌な思いをしているのだとわかってしまって。
「……も、もう2人とも、大きな誤解してるね! ファンとかさ、しかも、大つけるとか! そ、そんなわけないのにね!」
勝手に苦しくなった胸の奥を悟られないように、明るい声で気持ちを上塗りして。
もうこれ以上、接点を増やさないようにしなければと急いで算段をつけていると
「誤解、……でも、ないじゃん」
「……え、」
私に再び戻ってきた視線は、とても深くて。穏やかで静かな色をしているのに、なぜか感じることのできない何が潜んでいそうで。
「俺、自負してんだけど……」
少し子どもぽいような小さな呟きと、ゆらりとした眼差しが、微かに熱を帯びた気がした。
そうして、口元を覆っていた大きな手がゆっくりと剥がされて、近づいて……
「俺以上に、亜緒のこと見てたやついないって」
その指先が、私の頬を撫でた。
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