久遭色

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見上げると、澄生は居心地悪そうに眉を寄せていた。 はぁ…と短いため息をついたその姿を見つめていると、私の方へ静かな薄墨色の眼差しが流れて重なって、どきんと胸が反応する。 感情を乗せていなかったはずの澄生の瞳の奥に、よく知っている優しい色が灯った。 ……あ、澄生だ。 ふたりになったら真宮さんをやめて澄生に戻ってくれたことが嬉しくて、気持ちが解れていく。 自然とふふっと笑みが零れると、澄生も同じように目元を緩めた。 「……なんで、置いていかれちゃったの?」 ものすごいスピードで帰っていった碓井教授の様子を思い出してくすくす笑うと、澄生は口元を手で覆って困ったような嫌そうな、そんな複雑な表情で視線を逸らした。 「……いや、教授と高橋が、まぁ、いろいろと……」 「いろいろ?」 「……ちょっと、俺が、」 「うん?」 「あー、まぁ、……」 「?」 澄生の顔を覗き込むと、目が合って、でも、また逸らされて。 眉間に微かにしわを寄せているけれど……、不機嫌なのとはちょっと違うような? それに、こんなに歯切れの悪い澄生は珍しい。
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