渋谷甲太【2】

3/12
前へ
/132ページ
次へ
「うわ、俺だったら付き合わない」と呟きベッドの下に腕を突っ込んだ。「じゃ、やり方はわかるんだ」  やり方、というのがどういう意味かはわかった。「んだね」と答えた。「やっぱりさ、ゲイって男同士でやるの」と訊ねてすぐに変な質問をしてしまったと思った。俺だって彼女とセックスするんだからゲイが男同士でセックスするのは当たり前だろ。  黒須は吹き出した。「当然だろ、ばーか」と楽しげに笑うがやはり目は動かない。ベッドの下から出したのはチューブ容器で、洗顔フォームか何かにも見えたがパッケージで察した。ローションだ。見たことのないデザインだが、何となくわかる。「いいよ」と俺は言った。「女と同じだべ」と。黒須はどこか小馬鹿にしたように鼻から息を吐き、彼には大き過ぎるサイズの黒いスウェットを脱いだ。骨が浮き出た薄い胸。肌は真っ白だ。ズボンを脱ぎ、ぴっちりしているはずなのにウエスト部分が少し余っているボクサーパンツ一丁になった。相変わらず細い。太ったことなんてないんだろうな。 「これから脱がすのに、俺が着てるのはフェアじゃない気がした」と黒須は言ってベッドを下りる。「嫌なら目つぶってて」 「多分大丈夫だよ」 「勃たないのが一番白けるんだよ」言いながら俺のズボンのホックを外した。ファスナーを下ろしてトランクスのゴム部分を引っ張った。雰囲気に流されて少し硬くなった俺の一物を前に黒須が口を開けた。小さい顎に収まりきらなかった左右の犬歯が前に出っ張っている。あ、やっぱり黒須だ。そう思った瞬間、温かくヌルヌルとした感触がペニスを包んだ。最初は多少の戸惑いもあったし男にそう簡単に勃たせるかという妙な反抗心もあった。が、舌使いに男も女もない。小さな口をいっぱいに広げる黒須に可愛らしさも感じるようになり俺の一部は自分が思っていた以上に早く勃起した。
/132ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加