<やっぱり健一?>依子side

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<やっぱり健一?>依子side

今夜、帰ってくるんだろうか? 任意ってことはそんなに時間はかからないよね? ネットで検索するとだいたい1時間~2時間と書いてある。 無理無理無理無理無理無理無理 肩掛けバッグにノートパソコンと浮気調査の一式を突っ込むと、準備しておいたトランクを持って外に出ると従兄である鷹田道男に電話を掛けた。 『ヨリどうした?』 二つ年上の従兄は私をヨリと呼ぶ。 「みっちゃん。どうしよう警察が来て健一を連れて行った」 『はぁぁぁぁぁぁ、マジあいつムカつくな。不倫だけでもありえないのに。今、部屋にいるのか?』 「うううん。だって、帰ってきたら怖いっていうか。駅に向かってる」 そう答えるとみっちゃんは『駅で待ってろ』と言って電話を切った。 年が近いこともあってみっちゃんとは子供の頃から仲がいい。私とは三歳違いの妹と3人でよく遊んでいた。学生時代は従兄だと言っても付き合ってるんじゃないかとか言われていたくらいには仲がいいが、それは三兄妹みたいな感じだ。 実際、みっちゃんは私とは正反対の小柄でほんわかした彼女がいる。ぶっちゃけ、彼女といると私も癒されるレベルだ。 プッ 軽いクラクションの鳴った方を見るとみっちゃんが運転席から手を挙げている。 仕事でも使っている軽ワゴンの後部座席にトランクとパソコンを入れている肩掛けを置くと、助手席に座ってシートベルトを装着するタイミングでモニタにニュースが流れだした。 多摩川河川敷で見つかった女性の遺体に関して、事件に巻き込まれた可能性が高まったとして複数の関係者に話を聞いています。 この複数の関係者に健一が含まれているのは確かだろう。 と考えていると「複数の関係者の一人が健一くんか」とみっちゃんがつぶやいて思わず深く頷いてしまった。 「旦那さんだって怪しいってことない?」 「不倫をやめさせようと口論になってってか?でも、内容証明を送って来たんだろ」 「うん。でもさ、私だって今日送るつもりだったけど、こんな事になったでしょ。なにか不測の事態が起きて殺しちゃったとか?離婚のタイミングはどうしよう」 「そうだな」 「不倫していたのは確定でしょ。捕まったりしたら慰謝料はどうすればいいんだろう」 「向こうの両親に言えばいいだろ。息子はそれだけのことをしたんだから」 そんなことを話していると伯父の家に到着した。 「両親には言ったのか?」 「健一の不倫の話はして、離婚するつもりだとは言っているけど相手が本田遥香だとは言ってない」 「そっか」 気が付くとみっちゃんはトランクと肩掛けバッグを持つと車をロックした。 思えば健一はこういう気遣いができなかった。 持ってって言えば持ってくれるけど、言わなければ何もしない。 言われないと何もしないくせに浮気はするとか本当にムカつく・・・・てか、くやしい。 伯父の家に行くと快く迎えてくれて、一部屋使わせてもらうことになった。 実家はここからだと1時間以上かかるし、出勤することを考えると会社から近い伯父の家に厄介になれるのはありがたい。とはいえ、いい年した社会人がいつまでも親戚の家にいるわけにはいかないから、社員特権で仲介手数料免除で部屋を探さないといけない。 健一が犯人じゃないとしても、結局はあのマンションを出ることになるんだから。 結婚する時、賃貸で家賃を払うのならと中古マンションを購入することにしたのだ。 売るにしても売らないにしてもあのマンションには住めないから資産の半分を現金でもらいたい。 「で、健一君は警察に連れていかれたと」 伯父が神妙な面持ちで話す。 伯父の家のリビングには伯父一家、伯父と伯母、みっちゃんと私が一つのテーブルを囲んでいる。 任意だと言っていたこと、そして本田遥香の旦那から弁護士を通じて内容証明が今日届いたことを説明して、連名だったから私が開封して弁護士に連絡したことを話した。 「弁護士に頼んでいたということで、タイムラグが出てこのタイミングで届いたんだろう。ところで、二三男達にも不倫相手が殺されたことを伝えた方がいいんじゃないか?」 二三男というのは私の父だ。確かに、何かで警察が行くことがあるかもしれないからその方がいいかもしれないと思い、この場で実家に電話をしてニュースになっている多摩川の女性遺体は健一の不倫相手で、健一は任意同行として警察に行ったことを伝えると、温厚な父がガチ切れしていた。 何の解決策もないまま四人が向かい合っていると私のスマホが振動をはじめた。
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