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<本田遥香の旦那>依子side
『古賀依子さんの携帯で間違いありませんか?』
勧誘なら番号を確認してくることはない。明確に私に用事があるということだ。
「そうです」
『本田光一郎、遥香の夫です。お話があるということでしたので連絡いたしました』
弁護士さんに話をしたけど、まさか連絡をしてくれるとは思わなかった。
「お忙しい中、すみません」
『まぁ、忙しいのは通常のことですので。それで、どういった話でしょう?減額請求でしたら弁護士へおねがいします』
「いいえ、慰謝料は夫がするべきものですのでそれは本人が連絡するなり振込するなりをすると思います。私は、あのニュースを聞いたその日に奥様に対して内容証明を送るつもりでした。ですが、あのようになって自分だけが迷惑をこうむっているのが納得できなかったのですが、冷静になってみると不倫当事者ではない旦那さんにいうのも筋違いですよね」
昨日は連名で送られてきたきた事にも動揺というか腹が立った。もし、私が何も知らなかったとしたらとても残酷な事だから。
でも、冷静になるとあの女の旦那とは私は関係がない。
複雑な気分になる。
『そうですよね。古賀さんにとっては晴天の霹靂だったでしょうから。こちらの都合で連名で送らせていただきましたし』
「私の名前はどうして」
『そうですね。この状況ですので外で会うのは避けたほうがいいと思うので、会社にきていただいて少しお話をしませんか?』
「奥さんがあんな事になっているのに大丈夫なんですか?」
『今日の3時であれば時間が取れますが』
なんか一方的でイラッとするけど、話は聞いてみたい。
「わかりました」
『SMSで住所を送ります。あと、送る予定だった内容証明を持ってきてください。それから、不倫の証拠があるのでしたらそれも見せてもらっていいですか』
お伺いの体(てい)だけど、強制的だ。
マジで嫌な奴かもしれないけど、ここは我慢だ。
「わかりました。住所をお待ちしてます」
そう言って返事を待たずに通話を切った。
理子が心配そうに私を見ている。
「本田遥香の旦那さんが話をしようって」
「大丈夫?」
「気になるし、探偵の調査料金が結構かかったから旦那さんから少しでも慰謝料をもらえるならラッキーだし」
そう言っている時に本田光太郎から住所が送られてきた。
マップを送って来たので、場所の把握が簡単にできた。
「一緒に行こうか?」
「本田光太郎と会うのは私だけだけど、近くで待っててもらってもいい?」
「いいよ」
そんな話をしているとスマホに通知がはいる。
健一からのラインで
[俺が疑われてるかも]
[本当に俺はやってないんだ]
[依子も違うよな?]
一緒に画面を見ていた理子が
「あいつ、まだお姉ちゃんのこと疑ってんの」
と言って手を握りしめた。
きっと、ここに健一がいたらまたグーパンチされていただろう。
健一の為に、自分の人生を棒に振ることなんて絶対にしない。
私がそんなことをすると思っているんだろうか?
自分にそんな価値があると思ってるんだろうか?
不倫を知った時、もう健一への愛情なんて無くなったのに。
既読を付けずに放置した。
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