<本田遥香という女>依子side

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<本田遥香という女>依子side

「その感じですと、ご主人以外にも妻の不倫相手がいることをご存知のようですね」 「ええ、探偵を雇ったんですが夫に会った後に他の男性と一緒にいたみたいで写真をもらいました」 あの男性の名前とか何者なのか知らない。別料金になるとか言われて、離婚に必要な夫のことだけでもう一人の男性については調べなかった。 でも本田遥香、健一が溺れた女がどんな男性たちと付き合っていたのか知りたい。 「その恋人たちの写真とか見せてもらえたりしないですよね」 「ふっ」 また笑ってる。そりゃ、非常識かもしれないけど 「好奇心ということだけなので聞かなかった事にしてください」 「いいですよ」 「え?いいんですか?」 つい声が1オクターブ上がってしまった。 「わたしのほうは妻のスマホからのデータになるので少々刺激的な画像ですが、大丈夫ですか?」 見てやろうじゃない。 「はい、そう言えば私の名前はどうしてわかったんですか?」 本田光太郎は「ちょっと待ってください」と言って席を外すとファイルを手に戻ってきた。 古賀というインデックスがついたページを開くとそこには健一と本田遥香のラインのトーク画面が時系列で表示され印刷されていた。 [依子には会社に泊まると言ってあるから、今夜はずっと一緒にいられるよ] [そう] [じゃあいつものところで] というトーク画面を見つめる。 私の名前とかガッツリ書いてるんだ。 てか、この女は完全に妻が居るのを知ってるわけで慰謝料の請求を本人にしたかった。 「名前ガッツリですね」 「ふっ」 また笑ってる。 本田光太郎はファイルを指を揃えた手のひらでさし示して「どうぞ」と言った。 ファイルを手に取るとインデックスの数にゾッとした。 岡本、古賀、佐藤、隅田、高岡、西村、安川、吉川 健一は二番?と考えていると 「順番は五十音順です。便宜上。あと、これは住所などがわかったメンバーで、実際はもっといるんですが、これだけあれば充分裁判になっても勝てるのでこの8人に内容証明を送ってます」 健一は最低でも8分の1だったってこと? ファイルをめくると男性と本田遥香が一緒に写っている写真と男性の名前、住所が書かれている。 健一も同じように裸の本田遥香と抱き合っている写真があり、名前と住所そして配偶者として私の名前が書かれていた。 裸の写真なんてあんまり見たくないし、若い子からある程度の年齢まで様々だが、あの人物が居ない。 でも、こんな女性とよく結婚したと思っていると 「なんで、こんな女とって思ってます?」 顔に出ていたようだ。 仕方なく、頷く。 「業界のパーティでコンパニオンをしていた彼女がわたしに猛烈にアピールしてきて、その頃付き合ってる人もいなかったから付き合ったんです。彼女は結婚願望が強く、わたしも妻帯者であったほうが何かと仕事面で良かったので結婚をしましたが、なんていうか承認願望が高いというか簡単に言うとヒロインシンドロームとでもいうんでしょうかね。わたしと結婚したかったのはIT関連の社長夫人という肩書き、そしてチラシのモデルを年に1、2度する程度でもモデル事務所に登録されてるモデルである私、いつでもちやほやしてくれる男たちそういったもので自分を着飾っていたんです。結婚当初から他に男がいて、何人も男がいたから気持ち悪くて彼女とは家庭内別居状態でした」 ******* 見たことのない大きなベッドには真っ白なシーツがかけられていて、その上に何も身につけていない本田遥香が仰向けになっている。 写真の男たちも裸で次から次と本田遥香に絡み入っていく、その中に顔を紅潮させ鼻息荒く腰を振る健一、周りには順番待ちをする男たち ******* うっぷ 鳩尾から口蓋垂付近まで苦いものが込み上げてくる。慌てて手で口を塞ぐと本田光太郎がお手洗いの場所を説明してくれた。 水を流しながら洗面台に顔を近づけると、胃液が口の中に広がり酸味と苦味で水で口をすすいでもなかなか取れない。 気持ち悪い 気持ち悪い 何度か口をすすいでからふと鏡の前を見ると、籐で編んだカゴにポーションタイプのマウスウォッシュが入っていてそれを一つ使い口をすすぐと幾分気分も柔いだ。 お客様用にこういうのが置いてあるといいかも。 と、どうでもいいことを考える。 深呼吸をして本田光太郎のところに戻った。 「すみません、想像したら胃液が・・・」 「その気持ちもわからないではないですから、大丈夫ですよ」 「よく今まで離婚しなかったですね」 「もちろん、離婚の話はしていたけど彼女が拒否していて、面倒から放置していたら業界のパーティ会場で彼女の愛人がつまらないマウントをとってきて、流石に仕事に差し支えが出るから彼女のスマホを全てチェックして、裁判で勝てるようにファイルを作り愛人達に慰謝料の請求をして離婚の意思をアピールしようとしたところで、事件が起こったというわけです」 気持ちは悪いがファイルをもう一度確認していく。 あれ? 「このファイル以外にも居るとおっしゃってましたよね。その人達の写真とかは無いんですか?」 「あると言えばありますが」 そい言って茶封筒から数枚の印刷物を取り出した。 「ワンナイト的なものが多いですね」 ワンナイトの相手の写真の中にもあの人物の写真は見当たらない。 それに、ワンナイトという感じではない。 「私は探偵をお願いして調べてもらったんですが、報告書の中に二度出てきた男性がいたのですが、このファイルには無いですね」 「へぇ、その写真って見せてもらうことはできますか」 自分が持ってきた書類からビジネスホテルから出てくる健一と本田遥香の写真や肩を抱いたり手を繋いだりしている写真の他に本田遥香が40代くらいの男性と腕を組んでマンションに入っていく写真があった。 「この男性は彼女のスマホからは出てきたことがないですね」 「そうなんですね。この男性は健一とホテルから出てそれぞれ反対方面の電車に乗って直ぐ下車をしたので、ついつけて行ったら二子玉川のマンションに入って行ったそうです。そんな事が二度ほどあったのですが、私は健一と本田遥香の不貞の証拠だけが必要だったのでこの男性については調べてないんです」 「あの日、旦那さんは二子玉川で待ち合わせしたんですよね」 「ええ」 「この写真、写真を撮っても?」 「もちろん大丈夫です」 気がつくと1時間以上も話をしていたことに気づき、慌ててお暇を告げた。 事務所から出る時「何かありましたらいつでも連絡ください。情報を共有しましょう」と言ってラインのIDを交換した。
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