<秘密>健一side

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<秘密>健一side

依子の帰りが遅くなることがあった。 もしかすると浮気をしているのかもしれない。 そう思って依子が帰ってくる前にクローゼットを調べて何か証拠が無いか探してみた。 自分に黒い部分があるとつい人を疑いたくなる。 そして、見つけた。 セクションファイルの中から、俺が遥香さんとホテルに入る写真やBARでキスをしている写真が出てきた。 事細かに俺の行動が記された報告書に、俺のスマホのトーク画面の写真もあった。 そして、依子の綺麗な文字で書かれた離婚届が出てきた。 浮かれていた気分が一気に醒めた。 膨らんでどこまでも飛んでいきそうなバルーンをカラスに突かれた様な、そんな急激な変化だ。 何やってたんだろう。 書類を元通りに戻すと遥香さんにラインをした。 本田遥香さんは俺が勤めている賃貸保証会社が入っているビルで知り合った。 知り合ったというか、同じフロアにある小さな芸能事務所に登録しているモデルだ。 モデルと言ってもファンションショーとかテレビに出るとかではなくて企業の冊子だったり衣料品店のチラシなどが仕事らしいが、モデルだけあってスレンダー美人でとても目立った。 ビルの一階にあるカフェでたまたま隣に座って話をしているうちに連絡先を交換してラインのやり取りをするようになった。 それから二人で飲みに行ってそのままホテルに行ったことをきっかけにモデルの女性と秘密の関係を持っている。この体を好きにしているという優越感の様なものがあり不倫にのめり込んでしまった。 遥香さんにはIT関連の会社を経営している夫がいると聞いた時は、単純に社長とモデルでお似合いだと思ったが、それ以上に経営者の夫よりも俺の方が満足させているという優越感もあった。 妻の依子も明るい美人だが、遥香さんは少しアンニュイで官能的な美しさがあった。なにせモデルだから洗練されてた。 もちろん、依子に不満は無い。 不動産の仕事をしながらも、俺よりも早く帰宅して家のことをきちんとしてくれる。 家庭を壊すつもりなんかないんだ。 だから、離婚届を見たときは血の気が引いた。 完全に、目が覚めた。
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