<日常が壊れる>依子side

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<日常が壊れる>依子side

「依ちゃん、ちょっと」 出勤すると社長である伯父に声をかけられ社長室に向かう。 多分、あの事だ。 伯父とは情報を共有しているから、名前に気づいたんだろう。 ソファに向かい合わせに座ると伯父はテーブルに体を乗り出し小声で「本田遥香って」と半ば断定的な口調で言った。 「今朝、あのニュースが流れると健一の態度がちょっと変だった。汚れてもいない靴に土が付いてたって言ったら震えてた」 伯父に合わせて小声で答えるとますます二人の距離が近づき、ほとんど顔がくっつく程になっている。 「健一くんが殺ったんだろか?」 「相手から別れ話をされたとか?」 もしそんな事で本田遥香を殺したのなら、私って一体健一のなんだったんだろう? 「争った形跡が無いと発表されていたが、全てを報道するはずは無いからな。健一くんが浮気をしていると聞いた時も驚いたが、人を殺すとか」 「庇うつもりはないけど、健一が殺したとはまだ。それに、あんなに動揺しまくるようなヘタレが人を殺せるんだろうか?」 「殺すつもりはなくて死んだ可能性もあるだろ」 確かに ***** 「もう別れましょう」 「何でそんな事を言うんだ。俺は妻を捨てたとしても君を愛してるんだ。絶対に別れない」 健一は遥香の腕を掴かもうとするが振り解かれてしまう。 「しつこい男は嫌なのよ、いい加減にして」 カッとした健一は背を向けて歩き出した遥香の後頭部に手に持った大きめの石で殴るとスレンダーで魅惑的な体が崩れ落ちていく。 倒れて頭を打った様に見せかける為、健一は手に持っていた石を川の中に放ると遥香の体を仰向けにして大きめの石があるところで後頭部を打ち付けると人気の無い場所から土手を上り一目散に駅に向かった。 ***** 頭の中でこんな映像が流れる。 でも 「私が疑われたりしないかな?探偵を雇って調べていたことを警察が知るかもしれないでしょ?だとしたら自分から言った方がいいかな?」 「まずは被害者の交友関係からだろうから、いきなり依ちゃんのところに行き当たることは無いだろ。疑われるとしたら被害者の旦那か健一くんだろうな。で?実際の所はどうだと思う?」 「あのキョドりかただと、何かしらあったとしか思えないかな。今日、帰るのが怖い。私が気づいたと思ってるかもしれないし」 「まだ、話をしてないんだろ?」 「うん、今日、本田遥香に不倫の報告書と請求書を送るつもりだったから。それから、健一に離婚の話をするつもりだった。まさか、こんなことになるなんて。でも、もしかしたら殺人者かもしれない人と夜を過ごすのは怖い」 「依ちゃんが気づいてないと思っていた場合、下手に避けるのも悪手だな。とりあえず、貴重品をすぐに持ち出せる様にしてチェーンをせずに逃げられる体制にしておくとか、どうしても夜が怖ければいつでもここにきてくれて構わないからな」 貴重品に関しては健一の不倫が確定した時からいつでも家を出られるようにバックに入れて歩いている。だけど、それはそれでいつ落としたり、バッグを忘れたりしないか心配で緊張していた。 「貴重品というか、通帳とか売れそうな貴金属は持ち歩いていて、金庫に入れて置いてもらえると助かるんだけど」 「さすが依ちゃん。もちろん構わないよ」 その返事を聞いてホッとしながら通帳や実印、貴金属の入った袋を伯父に渡すと、伯父は一旦中のものをテーブルに並べだした。 「とりあえず、間違いのないように写真を撮って置いてくれ」 伯父やその家族を信頼しているからこそ、この作業は大切だと思い、自分のスマホで写真を撮っていった。 健一が何か他に隠していないか部屋を探してみた方がいいと言われていつもより2時間ほど早く上がらせてもらった。 伯父のその機転のおかげでまた一つ事実を知ることができた。
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