<犯人は誰?>依子side

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<犯人は誰?>依子side

健一は一人掛けのソファに座るとみっちゃんにぐーで殴られた頬を押さえているが、口の端が切れて血が滲んでいるのと鼻血がでて膝にポタポタと落ちている。 目の前にティッシュが置いてあるのに。 無性にムカついてティッシュを健一に投げつけた。 「目の前にティッシュがあるのに何やってんの。さっさと拭きなさいよ。痛いアピール?ふざけんじゃないわよ。そんなもの2、3日すれば治るでしょ。私は心に一生癒されない傷をあんたに受けたんだけど」 健一は慌てて数枚のティッシュを取って鼻と口を拭いた。 「ごめん」 「ねぇ、いつから?結婚する前から?」 健一はティッシュで鼻を抑えながら頭を振っている。 「違う、三ヶ月前くらいから」 やっぱり。本当にわかりやすい。 不倫初めてすぐからウキウキモードダダ漏れだった。 「私たちって世間では新婚って言われてるよね?何で結婚したわけ?健一って女がたくさんいないとダメ人間だったの?私の事好きだって言ってたのも嘘?ねぇ、何で結婚したのよ」 「ごめん。本当にごめん。依子の事を好きなのは今も変わらない。愛してる」 愛してる?きっもっ! 「健一の好きとか愛って随分と軽いんだね。夕方の半額セールみたい」 健一はティッシュで鼻を抑えながら、下を向いて泣き出した。 泣きたいのはこっちでしょ。 そう思うと、悔しさが込み上げる。 泣いたもん勝ちみないな状況を打ち破ったのはやっぱりみっちゃんだ。 パーーーーーン 私も驚いて肩が一瞬上がってしまったが、健一は涙と鼻水と鼻血がドロドロの顔をあげて放心状態になっている。 みっちゃんの手にはティッシュの箱があり、それでテーブルを叩いたため、乾いたいい音が響いたのだ。 「不倫された挙句に、だんなが容疑者にまでなって泣きたいのはヨリだろ。くだらないポーズはいいから、不倫の説明とお前が殺したのかどうかの説明をしろよ。多摩川に行ったのは間違いないんだろ」 「ごめん」 「もうそれはいいから、なんで不倫?その人と結婚したいくらい好きだった?相手にも旦那さんがいるの知ってた?」 本人は気づいているのか、本田遥香は健一だけじゃなかったよ。 探偵事務所に調査を頼んだ時、健一以外にも年上っぽい男性とも付き合いがある事を知った。 「依子と別れるなんて気持ちは全くなかった。ただ、浮かれていたんだ。ビルの同じフロアにあるモデル事務所から出てくるところを何度か見ていて、カフェで会ってラインの交換をした。モデルさんとラインで繋がっただけでも嬉しくて、それから二人で食事をして、そうしたら遥香さんから誘ってきたんだ。モデルに誘われて有頂天になった。でも、依子のクローゼットから離婚届を見つけて我に返った。急激に自分が何をしていたのかに気づいて遥香さんに連絡をした。遥香さんが二子玉川に用があると言っていたから、そこに会いに行って多摩川の橋の下で別れ話をした」 「それで揉めたのか?」との、みっちゃんの言葉に ******* 健一が本田遥香の手を取って河原に降りていく。 手を繋ぎ無言で歩く二人。 橋の下に来ると健一は重い口を開いた。 「妻に知られてしまった。しばらく距離を置いた方がいいかもしれない」 本田遥香は健一の腕に縋り付くと 「しばらくってどれくらい。別れたくない」 という遥香を抱きしめて深いキスをする。 「遥香さんを愛している。だけど、今は離婚をするわけにはいかないんだ。だから」 健一はそ言ういって遥香から離れようとしたが、「嫌よ、絶対に別れない」と言って縋り付く遥香を乱暴に引き離すと遥香はバランスを崩して後頭部から倒れていった。 ******* こんなことを想像していると 「いや、妻にバレて今更ながら妻が大切で愛していることに気がついた。別れようって言ったら、そうなの?わかった連絡先は消しとくわね。ビルでも声をかけない方がいい?それともお茶くらいはする?ってあっけらかんと言われて、つくづく何をしてたんだろうって思って、自分が恥ずかしくなって遥香さんを置いて土手を走り上がった。遥香さんにとって、俺は単なる遊び相手だった」 想像していたより残念な話だけど、単に遊び相手だったって・・・ 「向こうが真剣なら私と離婚したってこと?」 「いや、違う。依子と離婚なんて考えたこともなかったけど、遥香さんから誘ってきたからその・・・俺を好きなんだって思っていて。だから、あんなにあっさり別れ話が済むなんて思わなかったんだ」 「ねぇ?じゃあ誰が殺したの?」
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