プロローグ

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「なのに…何で…」 彼は何も答えず、沈黙がつづく。 時計の秒針がやけに大きく聞こえた。 「…ねぇ、何とか言ってよ!」 「……チッ、うっぜぇな…」 予想していなかった反応に、杏里は目を見開く。 最初は頭を下げしおらしくしていた彼だが、今はいかにもめんどくさそうな顔をしてこちらを見ていた。 「何だその顔、謝罪の言葉でも期待していたのか?この際だから全部言ってやる、俺他の子と結婚するから。」 「…………え?どういうことなの…?」 「俺さ、お前と付き合う前から取引先の社長の娘と付き合ってたんだよね。その子と結婚することになったからお前とはもう付き合えねーわ。」 「待って、最初から二股かけてたってこと?何で…」 「あぁそうだよ。その子の家って古い考えでさ、婚前交渉はしないって言われてるんだよね。そう言われても我慢できないじゃん、だからお前と付き合ったんだよ。」 頭をガツンと殴られたような感覚が襲う。 優しかった彼、会社をもっと大きくしたいと夢を語っていた彼、愛の言葉を囁いてくれた彼…それは全部嘘だったのか。
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