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プロローグ
「ちょっと、どういうこと…?」
アパートの一室。8畳ほどの狭い部屋に男女はいた。女は静かに怒り、男はただ頭を下げ女の言葉に耳を傾けていた。
「言った通りだ…俺と別れてほしい。」
「なんで急にそんなこと言うの?」
「急じゃない、ずっと考えていたんだ。」
「何が不満なの?わたしわがままだって言わないし、それにあなたの借金を返すためにバイトまでして頑張ってるじゃない、それなのに…」
怒りを通り越し、涙が溢れてきた。
わたし、鈴村杏里は今目の前にいる恋人、手越孝仁と付き合って5年になる。彼は会社を経営しているが最近業績が思わしくなく赤字が続いていた。それを埋めるためわたしは昼間は本職である市役所勤務、夜はキャバクラでバイトをしていた。もちろんこんなこと職場にバレたらタダでは済まない。でも困っている彼を助けたくてそれを承知の上で必死に働いた。
苦手なお酒もギャバ嬢同士のいざこざも、嫌な客の相手も、彼のためなら頑張れた。
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