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およそ二時間ほど調査をしたが、特に目ぼしい現象に遭遇しなかったので、あとは今日の結果をまとめて引き返すつもりであった。
しかし、その準備をしている途中、突如どこからか何かを打ち付けるような音が微かに聞こえてきた。しかもそれは徐々に音が大きくなり、近付いて来ているように感じた。
「おいおい、何てタイミングだ」
彼はどこかホッとしたような声で再びカメラを手に取り、辺りを隈なく撮影した。
この時も打ち付けるような音は聞こえる。
暫く撮影を続けたが、それ以上の進展は無く、音もやがて聞こえなくなった為、中断した。
「やれやれ、勿体ぶられたって感じですね。まあでもそれだけでも収穫ですよ。さて、ここに定点カメラを設置して一旦撤収しましょう」
そう言って彼は老木の近くに定点カメラを置いてこの場を立ち去った。
しかし、彼はこの定点カメラを回収しに戻って来ることは無かった。
その日の朝、彼は敷地内の池で水死体として発見された。
司法解剖の結果、死因は溺死。目立った外傷も無く、現場付近で襲われたり、争った形跡は確認出来なかった為、事故として処理され、捜査は早々に終結した。
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