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せっかくのお月見なのに、残念ながら今日は曇り。時々雨もぱらついている。月は分厚い雲に遮られて、二十分前にちょっと顔を出しただけ。
——あーあ。せっかくお団子買って来たのに。もう下げて食べちゃおう。こんなんなら、餡団子じゃ無くて、肉団子にすれば良かった。そしたら、ビール飲みながら、晩ご飯になったのに。
ベランダの掃き出し窓に、お盆を置いてちょこんと備えたお団子の皿と、缶ビール。早々に部屋に入れようと、手を伸ばした時である。
「おーいお待ちくだされ」
——なんか聞こえた? そんなはず無いよね。
ここは角部屋だし、向こう側の隣は、さっき彼氏が迎えに来て、嬉しそうに出かけてたし。下の部屋は夕方からのお仕事だし。そのお隣は、昨日から留守だし。
——何も聴こえる訳無いわ。
さっさと窓を閉めようとして、強い光に射抜かれた。
なに? 新手の強盗?
叫ぼうとしても、舌が張り付いて声が出ない。
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