いつもの道でも

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 見慣れたはずの通勤コースも、ゆっくりと、辺りの様子を観察しながら歩いてみると、色々と気づくことがあった。  こんなお店あったんだ、とか、ここ閉店しちゃったんだ、とか。  建物があったはずの場所が空き地になっていたり、逆に空き地だったところに建物が出来ていたり。  どうして今まで気づかなかったのかと思っていると、目に入ったのは街行く人達の姿。  自分がゆっくりと歩いているからかもしれないが、心なしかみんな早足に見える。  もちろん、それが悪いことだとは思わないが、どうにも余裕がないように見えて、何とも言えない気持ちになった。  ……そういえば、街行く人々の姿にも変化が見られた。  夏から秋へと変わる時期と言うことで、それまでの薄着で肌の露出も多めだった服装から、個人差もあるが全体的に一枚羽織ったような印象に。  季節の変わり目は日によって差も大きく、明日も今日のような服装でいいとは限らないが、やがては気候も服装も秋めいたものが多くなっていくのだろう。  そして冬がやってくれば、厳しい寒さに耐えるため、夏と比べれば一回り身体が大きく見えるような厚着が当たり前になっていく。  そんなことを傾いた日に照らされながら考えていると、自然とこんなことが頭に浮かんだ。 「そっか、寝坊も五時間を超えると、かえって落ち着いた気持ちでいられるものなんだなあ……」
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