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ある日の言の葉・1
最近はご無沙汰だったか、久しぶりの気がするわ、あなたに語り掛けるのは。
うんざりするほど今までになく暑さが続いて体がダルイ。疲れやすいから精神もブレやすい。適温って大事よね。あなたは、元気でいるのかしら。
私は……ある意味ドラマみたいなことがあったわ。命が危ぶまれて20年ぶりに連絡してきた人がいたの。会ってきた。
年齢差も10数年。異性で、心が壊れてしまった相手。まぁ、普通なら会わないよね。なのに、会いに行っちゃった。
大半の人は色恋と思ったみたい。全然違うのにね。異性というだけでそういうものという安直さはこの国ならではなのか。少しげんなりする。関係性? うーん……なんて言えばいいのか。そうね、近しいところで相方かな。
お互いに恋愛感情はなかった。ただ、出会った瞬間、同じ世界を生きられる人だと思ったわ。彼も同じだったみたい。戦友でもある。手合わせをしたから本能がこの人は私に絶対に危害を与えない。そう、確信していた。だから、彼の車に乗ったし、同じホテルに泊まるなんてこともしたし、無防備に眠りもした。今更、よくそんな行動したなって思うんだけどね。けど、それくらい信頼できる相手だったの。全然大人じゃなくて、無茶苦茶で、隠しているけれど危うい好みを持っているのも私にはバレバレで、ヘンに真面目で完璧主義。そして、自由で気の向くまま消えて20年。
……会うことに迷いはなかったけれど、気は重たかった。だってね、壊れているのが短い時間でもはっきりわかっちゃったから。不安定で、明るい奔放な彼に会えないって予感があった。人間って、脆いよねぇ……。
年月が経てば人は変わる。少なくとも色々なことがある。もちろん、私も。壊れた心が言動を狂わせる。怖くて、悲しかった。20年前と変わらない彼が見え隠れするの。恋愛じゃないけれど両片思いしていたような告白。何度でも思い出して、今どうしているだろうと思いを馳せる相手。世の生きづらさを憂い、苛立ち、それでもしっかり生きようとする。すごく似ていて近い相手。ああ、きついなって思った。でも、嫌いになれない。やっぱり思いを馳せるんだろうって。それでも、やっぱり恋じゃないの。
次の日にプレゼント渡して去って行った。20年前と変わらぬ笑顔で。……ホント、ドラマのシーンじゃないんだからさ。そこも含めて、らしいんだけどね。肝心なところは読み違えて、墓穴掘る。けれど、やることなすことマンガや映画のワン・シーンみたく格好付け。ああ、ラスト・シーンだ。そう思った。
私は彼が死ぬまでプレゼントは身に付けないし、葬式にも行かないと思うし、2度と会うことはないと思う。壊れた心が暴走しない限り、ラスト・シーンが変わることはない。ただ、特別な位置づけのまま互いの人生を閉じるんだろう。友人でも、恋人でもない。関係性のしっくりくる名前は無くとも。そんな出会いもあるんだね。 人生色々。何があるかわからないのが人生。本当にね。
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