ある雨の日

1/4
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ

ある雨の日

 これ、早瀬川まつり。  ほらこの、ピンクの髪にアラレちゃんみたいな眼鏡、自宅の廊下、はめごろしの長窓の脇に座って、親友の藤原美鈴(みれい)の足にペディキュア施してる真剣な彼女。  お気に入りのパーカーはいつも通りだけど、今日はピンクの髪を編み込みにしてるし、眼鏡の下の顔には程よいメイクが施してある。  外は雨が降っている。長窓をしとどめく滝のように、雨が伝っていく。叩きつける雨のほかは、水族館の底に沈められたかのように、辺りは静かだ。  六月だから、雨は別段珍しいことではないけれど、先ほどまでの晴天と引き比べて、まるで私たちのこころ模様を映し出しているようだ、とまつりは思う。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!