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ある雨の日
これ、早瀬川まつり。
ほらこの、ピンクの髪にアラレちゃんみたいな眼鏡、自宅の廊下、はめごろしの長窓の脇に座って、親友の藤原美鈴の足にペディキュア施してる真剣な彼女。
お気に入りのパーカーはいつも通りだけど、今日はピンクの髪を編み込みにしてるし、眼鏡の下の顔には程よいメイクが施してある。
外は雨が降っている。長窓をしとどめく滝のように、雨が伝っていく。叩きつける雨のほかは、水族館の底に沈められたかのように、辺りは静かだ。
六月だから、雨は別段珍しいことではないけれど、先ほどまでの晴天と引き比べて、まるで私たちのこころ模様を映し出しているようだ、とまつりは思う。
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