ある雨の日

3/4
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
「青い爪ってさ。強くなった気になれるのよね。」  美鈴が手の指を眺めながら、ぼんやり呟く。その手の指には、先ほどまでは真珠色のネイルが施されていた。 「できたよ。」  まつりは美鈴を見上げる。 「ありがと。完璧ね。このペディキュア、南国リゾートのプールに映えるわ。」  言っていることと、静かな声のトーンが、まるでちぐはぐだとまつりは思う。 「どこだっけ?」  とまつり。 「バリ。」  と美鈴。 「……ほんとに行くの?」 「行くに決まってるでしょ。」  まつりはなんだかたまらない気持ちになって、美鈴の膝に絡みついた。 「じゃあ、私も行く。」 「だーめ。仕事たくさんあるんでしょ。遠藤みつるだって、放っておいたらかわいそうじゃない。」
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!