五月のある日

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五月のある日

 ある日曜の午後、この物語のキーパーソンとも言える藤原美鈴が早瀬川まつりの家を訪れると、廊下に置かれた緋色の革張りのソファの上で、まつりの恋人である遠藤みつるが寝ていた。  顔には本が広げて被せてあり、だらしなく左腕は垂れ下がっている。 「おい! 豆!」  みつるを乱暴に蹴り飛ばす、藤原美鈴。  どうやら美鈴のなかで、みつるのあだ名は「豆」に決まったようである。当然由来は、みつるの顔が豆に似ているからだろう。 豆は、否、遠藤みつるは本をどけ、目を開けると、 「あ。美鈴さん。」  とぼんやりした声でつぶやいた。  美鈴、まつり、みつるのなかで、一番年下なのは美鈴のはずなのだが、悲しいかな、みつるの立場は弱い。  美鈴は最強女子である。
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