01.

1/1

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

01.

 莉亜は中学二年生。四年ぶりに会う田舎の祖父母はその成長ぶりに目を丸くするばかり。最後に会ったのが小学四年生のときだから。  祖父母の田舎は莉亜の住む街から特急と普通電車を乗り継いで二時間。両親も姉も忙しく、莉亜はひとりで祖父母の家を訪れた。  お盆の時期だって仕事に夏期講習と忙しく、ようやくお盆を過ぎて、夏休みも残り十日という時期に、莉亜は祖父母の家で一週間過ごすことにした。中三になれば受験勉強で忙しくなるし、ますます祖父母の家を訪れる機会も減るだろうという理由で。  祖父母の家の畳の上に寝転がる莉亜の鼻をくすぐるのは、エアコンの風が運ぶ古い家に独特の匂い。莉亜が幼かった頃、午後でも窓を開けていれば涼しい風が吹き抜けたけれど、最近の地球温暖化の影響で田舎も暑さが増している。熱中症は高齢者の大敵だから。  いつの間にか昼寝をしていた莉亜は、大事ななにかを思い出したように畳から起き上がる。夕方の光の気配が空に散りばめられ、空気も少しは真昼よりも下がったくらいの時間。 「ねえ、御神木に会ってくる」  玄関で叫んだ莉亜に祖母が告げる。 「気をつけてね、すぐに帰ってくるのよ」  御神木のところに行くのならしかたない、そんな顔で。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加