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05.
けど、またあの少年がいるだろうか。そんなうんざりした想像が頭に浮かぶ。でも、それは行ってみないことにはわからない。理亜は御神木の根本に抜ける森の道を歩いて行った。
またいた……。
御神木に近づくにつれ、あの少年の姿がはっきりと見えてきた。莉亜は思わずひるんでしまう。けど、せっかくここまで来たとの思いが莉亜の歩みを前に進める。少年は御神木の根元に座り込み、なにかをやっている。なにをやってるんだろう。
莉亜は足音を立てないように気をつけて歩いていたはずなのに、少年の姿に注意するあまり、足元を見ていなかった。木の根っこか転がっていた石に足を取られ、思い切り転んでしまう。
「いてててて……」
派手な音を立てて転んだ莉亜。痛みをこらえながら起き上がる。悪いことに膝小僧を擦りむいて、出血していた。
「サイアク……」
「おい、大丈夫か?」
気がつくと、あの少年が目の前にいた。心配そうな顔で莉亜の顔をのぞき込んでいる。
「転んで膝を擦りむいただけ、大丈夫」
「あまり大丈夫じゃなさそうだ。ちょっとここで待ってろ」
少年は小走りで御神木へと駆け出して行った。そして御神木の裏側へまわり込む。少年の姿が見えなくなったと思ったら、今度は御神木の裏側から姿を現し、莉亜に向かって走ってくる。手になにかを持って。
「薬だ。これが効くはずだ」
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