06.

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06.

 少年はあやしげな緑色をした塗り薬を手にしていた。そんな塗り薬を莉亜に手渡し、それを傷に塗り込めと少年が告げた。  こんなあやしげな緑色をした得体の知れない薬など莉亜は使いたくはなかったけれど、血が次々ににじむばかり。しかたなく塗り薬を傷に塗り込む。粘りのある塗り薬のせいなのか、出血は止まった。 「ありがとう」  莉亜のお礼の言葉に、少年は満足したような笑顔を浮かべた。  ちょっといいところあるじゃん……。 「ありがとう。ねえ、こんなところでなにをしてたの?」  莉亜は少年にたずねる。 「セミたちを埋めていた」 「セミ?」 「セミは地上に出ると一週間しか生きられない。だから、セミの死骸が御神木のまわりにいっぱい落ちている。それを埋めていた」  そう告げる少年の顔は、悲しげで苦痛に満ちている。御神木の根元にはたしかにセミの死骸が転がっていた。それもいくつも。 「このセミたちを土に埋めていたのね?」 「そう、それがおれの役割でもあるから」  役割とはおおげさだけど、それがまた子どもっぽい。セミの死骸を土に埋めることも。思わず吹き出しそうになるのをこらえる莉亜。 「そう、けっこういいヤツじゃん」  莉亜のそんな言葉に、少年は気を良くしたのか笑顔を浮かべた。
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