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09.
翌日、莉亜が元の街へと帰る日がやってきた。午後の普通列車に乗らなきゃいけない。
「ちょっと御神木にあいさつしてくる。お世話になりましたって」
朝食を食べ終えるや否や、莉亜は祖父母の家を飛び出す。
このままあの少年と別れるのはいやだ。せっかくこの村で出会って、楽しく一週間を過ごせたんだから……。せめてお礼だけでも。
御神木のところにたどり着くと、あの少年がいた。けど、青白い顔を浮かべて、ひどく体調が悪そうにしている。
「大丈夫?」
莉亜の言葉に少年はうなずく。
「うん。君が来てくれるんじゃないかなって気がして」
「そう。私もあなたがここにいるんじゃないかなって思って」
莉亜と少年は見つめ合う、やがて少年が口を開く。
「君と出会えて本当によかった。地上に出てきた甲斐があった」
「地上に出てきた?」
具合が悪いあまり、変なことを口走ったのだろうか?
心配する莉亜に少年は微笑みかける。
「これが本当に最後だよ、ありがとう。この一週間楽しかったよ」
「ねえ、なんで最後なの。連絡先を教えてよ……」
青白い顔の少年に莉亜がそう言った瞬間、強い風が吹いた。
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