0人が本棚に入れています
本棚に追加
すっぱい匂いで目が覚めた。
身を起こすと、私は全裸で白い物体の上に乗っていた。
何これ?
どういうこと?
わけがわからない。
さっきまで、確かに教室で数学の授業を受けていたはずなのに…。
身体の下の白いものは、やわらかいつぶつぶでできていて、つんと鼻をつく匂いを放っている。
おなかのあたりがひりひりするので目をやると、気味の悪い緑色の流動物が付着していた。
ひりひりするのは、どうやらこいつが原因らしい。
仕方なく緑のどろどろを素手で取り、振り払った。
その反動で危うくおっこちそうになり、私は白い地面にしがみついた。
どうしてなのかはわからないけど、私を乗せたこの白い物体はゆっくりと移動しているようだった。
周囲を見回すと、私の前後にも同じような箱型の物体があり、そのうえで裸の少女たちがきょろきょろあたりを見回していた。
唯も華もミカもいる。
みんな私のクラスメイトたちである。
彼女たちが乗っているのは、私のと同じ白いつぶつぶでできた四角い乗り物だ。
乗り物の下はベルトコンベアみたいな動く道路になっていて、私たちの乗る乗り物はそれによって運ばれているというわけだ。
「あ、ユキ! ね、何がどうなってんの?」
私の前を行く乗り物の上の少女が振り向いた。
親友のみのりだった。
「わかんないよ。気がついたらここにいたんだもの」
「でも、なんで裸なのよ? それに、ここって…」
みのりが言いかけた、その瞬間である。
ふいに彼女を乗せた乗り物が持ち上がった。
「みのり!」
叫んだ私は、見た。
太い芋虫のような指がみのりの乗り物をつまんでいる。
そしてその向こうに開いた、赤く大きな口。
みのりが乗り物ごとその中に吸い込まれていく。
「助けて! ユキ!」
それがみのりの最後の言葉だった。
最初のコメントを投稿しよう!