次の夏までおやすみ

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 蔵の中にそのまましまっておくのは流石に忍びなくて、私は箱に入れた風鈴を自室に持っていくことにした。クローゼットの上部の設置されている飾り棚の上に仕舞おうと思ったのだ。  別れ際、笠から教えられたのは、付喪神はしばしの眠りについたため、風鈴はすぐに飾らずに置いておいて欲しいこと。そして、来年の夏には必ず飾ることを忘れないで欲しい、と。 「そうすれば、音が聞こえることはもう無くなりますよ」と。  変な人に出会い、不思議な経験をした一日だったけれど、気持ちはとても清々しかった。  仕舞う前に、最後にもう一度だけ、箱を開けて風鈴をなでる。 (次の夏にはちゃんと出してあげるからね)  そう心の中で呟いてから、声にも出しておこうと思って言葉を紡ぐ。 「だから、次の夏までおやすみ」
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