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2年前、中学卒業直後の15歳で失踪した娘、オリエが
新鋭色鉛筆画家 福西里栄 17歳
というテロップをつけて映し出されている。
インタビューに応えた訳ではなく、写真を1枚撮らせただけのようだが
「どういうことかしら…隠れているつもりなら写真は撮らせないでしょうに…」
サリの困惑には五郎も頷くしかない。オリエは
“さようなら”
という書き置きを残し、スマホも小遣いも何も持たずに失踪したのだから。
当時は警察に届け出ても、自ら出て行き事件性がないと断定され、未成年のため聞き込みなどの捜索を2ヶ月ほどした後
“手がかりなし”
と捜索を打ち切られた。
「しかも…このギャラリーは遠くない」
「あなた、福西って人に心当たりがある?」
「いや」
「そんな知り合いいないわよね。この辺りじゃ、大地主の福西家が有名だけど、オリエにも画家にも接点はないだろうし」
大地主、底地権者の福西家が家出少女と関わるはずがない。けれども、福西と聞いたからには調べてみないといけない。何よりオリエが福西里栄として存在するという事実と、探し出す手掛かりを得た。
「もしもし、私だ。至急、◯◯ギャラリーで個展を開いた福西里栄を調べて欲しい」
五郎は、15歳当時よりさらに美しくなったオリエを発見した喜びと、この2年の間に何があったのかという不安を、天気予報を映し出す大画面に向け、ため息にして吐き出す。
「早く迎えに行きたいわ」
「ああ、そうだな」
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