ひとさらいのくれたもの

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「社長、オリエさんのご報告書です」 生まれ育ったこの地で、運送業と倉庫業を合わせた物流業を営む松岡五郎は 「君が…オリエと言ったのは答え…だな?」 福西里栄の調査を指示した秘書の平岡みな実が差し出すUSBを受け取りながら問う。画面越しに娘のオリエを見てから4日目のことだ。 「はい。詳細は存じ上げませんが、その1点だけはUSBの稼働確認にて目にしたので」 「そうか、構わないよ。オリエのことで君に協力してもらうことがあるかもしれないから」 静かに腰を折って平岡が出て行くと、五郎はすぐに娘オリエの調査書をパソコン画面に浮かび上がらせた。 日時詳細不明、おそらく松岡家を出た直後から福西仁左衛門88歳の邸宅で“福西里栄”として生活。 学ぶ通信制高校は広域制通信高校、通学必要日には県外の高校へ通学。 高校への保護者登録、仁左衛門の孫、福西左門(ふくにしさもん)35歳。 個展のギャラリーを賃借り契約した人物、福西左門。 里栄の絵は個展まで外に出たことがないが、今回3日間の個展開催中、大盛況で個展は大成功。 たくさんの要望にも関わらず、1枚の絵も販売はされず、受注もなし。 …どういうことだろう… あれらの絵は本当にオリエが描いたのだろうか?オリエの絵など見たことがない。 大地主、福西家が家出少女を匿っているということか? 同じエリアに住んでいながらこの2年間の目撃情報はゼロだったが、県外へ通学する日もあるのは、わざわざの県外か? 調査書の最後は たとえ未成年者が同意していたとしても、監護者である保護者の同意なく連れ去った場合、未成年者誘拐罪が成立する と結ばれていた。
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