プロローグ

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プロローグ

 5センチほど開いたふすまの隙間から、あの音が聞こえてくる。  キチキチキチキチ・・・。  やっぱり、来ているのだ。  あいつが。  すぐそこまで。  見たくなかった。  絶対に。    でも、身体が勝手に動いていた。  吸い寄せられるように、ふすまに近づいていく。  キチキチキチキチ・・・。  音が大きくなる。  まるで耳の中でたくさんのセミが泣きわめいているようだ。  畳の上にうずくまり、恐る恐る首を伸ばす。  見えた。  10畳ほどもある広い和室。  その真ん中で、あいつがゆっくり回っている。  カタカタとおもちゃのように身体を揺すりながら。  見ちゃだめだ。  心の中で、もうひとりの自分が叫ぶ。  でも、もう遅かった。  その時、身体ごと”それ”が振り向いたのだ。  そしてー。  
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