あす、夏に会いましょう

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 ぐしゃり。  なにかが砕け散ったような感触がして、足元を見下ろした。それが蝉の抜け殻“だった”ものだと気が付いて、なんだか心の中のどこかが、ぐしゃぐしゃになってしまったような気持ちになる。スニーカーの靴底にこびりついた残骸をアスファルトに擦り付けて、そうしたらもう、いよいよそれがなんだったのかが分からなくなってしまった。  ぐしゃり。抜け殻を潰した音は、夏の始まりの合図だった。
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