第二話 仁という鬼

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それから色々あった。 探し歩く間に生き残った鬼族を見つけ、人型の鬼は『神』と崇められる力を持って生まれるとか、同じ人型のつがいとして生まれるとか、そんな話を教わった。 鬼狩りを始めたのは、とある『武士』がきっかけだったのも知った。 遊郭で女郎のヒモみたいな経験もした。彼女は病で儚くなってしまったが。 その途中で食べられそうになった小百合を助けたら恩義を感じてついてくるようになった。 数年が経つと、鬼女の噂が再び再燃した。 その噂を聞いて喜んだ。 おそらく彼女こそが自分の“番”であり、自分と同じ復讐の意思を持つ唯一の鬼だと。 共に敵討ちをするため、隣に立つため、いろんな情報を聞きかじり、探し続けた。 ついに城下町まで辿り着いて、何か情報はないかと巡っているうちに、賑やかな音楽に魅かれて訪れた先。 天女のように美しい舞をする彼女に目を奪われた。 そして彼女こそが探していた鬼女だとは気付かず、舞姫を狙う狼藉者を倒して助けようとした結果───。 クロ 『今に至るわけだ』 要約したとはいえ全部話しやがった…とがっくり顔を畳に埋める仁。 お銀 「なかなか長い話でしたね」 モフられるうちに眠ったたぬきと、いつの間にか部屋の隅でぷーすこ腹を出して寝ている子犬、コハクを抱き寄せて、そっと座布団に寝かせると、弥勒が手拭いを掛けてくれた。 でろん。 白目をむいて寝ているコハクに女の子なのに…とぼやいている弥勒。メスだったんだその子。とちょっと驚きを隠せない。 お銀 「それで、私を見つけて娶るとか、協力者になるとか言ってたわけですね…」 クロの下で顔を埋める彼を覗き込む。 あ、つむじ。つん。 急に突かれてビクッとし、じとっと顔を上げてくる。 畳の跡がついてらっしゃる。 お銀 「私も、初めて同じ鬼に会えたのは嬉しかったです」 村では私だけ人型で、皆筋骨隆々だし、ツノもこんなに控えめで。と自身のツノを撫でる。 お銀 「神通力も獣と話せる、擦り傷が早く治る程度で、ほとんどないようなもの」 あなたが来てくれたことで、私は安心感を覚えた。 お銀 「他の生き残りもいると教えてくれたのも、あなた」 私は復讐に夢中で、生き残りがいることすら考えたことはなかった。あの村しか知らなかったから。 お銀 「私を探してくれてありがとう、仁さん」 その言葉にぐわっぱ!と一気に起き上がるもんだから転がるクロ。あーれー。 仁 「じゃあ!お嫁さんに!」 お銀 「ならない」 ドゥン。と床に張り付く大男。 起きたコハクがヒャッハァー!!とその背中を駆け上ってお尻の割れ目を掘りまくる。死体蹴りやめてあげて。と大牙が咥えてった。 お銀 「…ですが、まあ…その後のことはまず復讐が終わってからにしましょう」 !!!と顔をあげる彼。 お銀 「それより。この鬼狩りを始めたのは誰ですか?」 空洞がこちらを見つめている。 きらりと何か光った気がした。 仁 「最初に鬼狩りを始めたのは、『坂田金虎』という野武士だ」     
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