第三話 坂田金虎という男

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今から30数年前。 百姓の村に住む坂田家に大きな男の子が生まれた。 その子は他の赤ちゃんよりも大きく、たくましかった。 虎のようにたくましく雄々しく、金に困らないように、と意味を込めて金虎(きんとら)と名付けられ、大層可愛がられて育った。 幼児の頃から米俵を二つほど持ち、力持ちさで皆を驚かせ、アシガラ山から人喰い熊が降りてきた時も、齢5歳で首の骨をへし折り仕留めるという偉業を成した。 村の皆が讃えた、坂田金虎を。 それが傲慢さを育てる事になるとも知らず。 成長期を迎え、この時代の人々の平均は四尺(120㎝)から五尺(150㎝)ほどだったが、金虎は七尺(210㎝)もの背があり、体格も立派で皆から名前通り大きな虎じゃのう、巨人じゃのう、とよく言われた。 そして思春期もあり、有り余る力をあちこちで暴れて発散するようになった。次第に同年代や若い男たちを力で従わせ始めた。 百姓の村は百姓しかおらず、お貴族様は果ての都。 村の男たちが束になっても金虎には勝てず、あっという間に村を支配されてしまった。 両親も何度も諌め止めるが、暴力を振るわれて従うしかなくなった。 力自慢なのに、この村でやれることは荷運びや用心棒などその程度。食物を集めても、女を抱いても、やはり百姓しかいない村ではなんの立場もない。 退屈にも程がある!と暴れてばかりいたそんなある日、都から戦が始まるとのことで徴兵命令が入った。 男たちはそれに参加しなければいけなかった。 もちろん金虎も。 出ていってくれて村の人々はとてもホッとしたと言う。 金虎は初めは一介の雑兵だったが、1人抜きん出て大きく強かったため、あっという間にぐんぐんと昇進していった。 そんな金虎に目をつけたお侍、源頼道(ミナモトノヨリミチ)に引き抜かれ、このところ起こる都の美しい娘を攫っていく酒呑童子率いる鬼たちを倒すという依頼を受け、進軍を決めた。 それがのちの鬼族大量虐殺のきっかけとなる。          
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