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ぐい。
コロ
『近いゾ』
割り込んできた骨頭犬に、口説く邪魔をしないでくれるかね。お前の飼い主の番になる予定の男だぞ。敬わんかい。と胸を張る。
どこから来るんだその自信は!とがうがうがう!!!!
案の定、コロに食いつかれてあちこちビタンビタン叩きつけられてる。
ぽい。
雑に放られた。
ぐったりする仁。噛みつかれた部位から血は出てないが、涎で濡れてる。
コロ
『あいつ硬いナ』
カチカチと歯を噛み慣らし、舌舐めずりするコロを宥める様に撫でるお銀。そして助けないクロ。
なぜ助けない!?!?と飛び起きる仁に、クロがやかましいぞ。コハクが起きるだろうが。と牙を剥き出してきてヒェッと下がる。
お銀
「あなたの立場がわからなくなりました。あなたってこの一行の頭領みたいなものでは?」
仁
「そのはずなんだけどなあ」
頭をぽりぽり。
あーいてて。おもっきり噛みやがって。刃が通らない皮膚とはいえ痛いもんは痛いんだぞ。とぷーぷー。
刃が通らない…。
仁
「人型の鬼は神通力を持って生まれるってのぁ、聞いたことあんだろう?」
その言葉に頷くお銀。
仁
「俺は爪牙や刃を通さない肌に、変化、そして鬼火を操る力を持って生まれた。だから人間共に襲われたとき、俺は殺されずに済んだのさ」
だから生き残ったのか。と納得した。
仁
「お銀ちゃんはなんの神通力を持ってるんだ?昨日戦っているのを見たが、その頭蓋骨が頭にまとわりついて形になったり、爪を伸ばしていたよな。変化とかかい?」
その言葉に首を振る。
お銀
「私は自分の擦り傷が早く治るのと、獣と対話ができるのみです」
とてもしょぼい神通力だと揶揄われたものだ。
お銀
「一番良いのは、地水火風の自然を操る力、豊穣の力、治癒の力だと言われていますが、私はそのどれも該当しない。ただの小娘と何ら変わりない存在です」
頭蓋骨を撫でる。
お銀
「私が“爪”と“牙”を持てたのは、ある神の助けがあってのこと」
ある神…?と食い入る様に問う仁。
それに答える前に、弥勒たちが掃除が終わったと知らせに来たため、話を切り上げることにした。
小百合
「食事の用意ができましたっちゃ」
愛嬌ある微笑みを浮かべ、お膳に並べられた美味しそうな手料理を見せてくれた。
弥勒が真っ先にそのお膳を客間に運ぶ手伝いを申し出た。
彼の小百合に向けるどこか熱っぽいその眼差しに、何か察するものがあった。
弥勒は彼女を好きなのだ。
だが狼と狸。
客室へ向かう道中、あの二人、実ると良いね。と隣を歩くコロを撫で、こそっと呟いた。
へふ。
そうだな。と返事したのが伝わって、微かに口元を緩めた。
客間がピカピカになっている。
あんな短時間で。と驚きつつ、並べられるお膳を前に腰掛ける。
コハクもいつのまにか起きてご飯をよこせぇぇぇ!!!と大興奮で小百合にまとわりついている。あの子は元気すぎやしないだろうか。
仁
「拾った時からすっげえ食い意地はっててなあ…」
クロも少し疲れた顔。どうやら毎度のことらしい。
お疲れ。とコロが慰めている。
大牙がお前のご飯はこっちな。そう言って鳥肉をほぐしたものを盛り付けた皿を出すと、半ば突撃するように食らいついて、畳の上を滑りながら壁に激突して行った。
一心不乱に貪る子犬を思わず眺める一同だったが、気を取り直し早速食事にありついた。
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