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〆2
ベネディクトが行方不明になり、真っ先に行動をとったのは霊鬼達だった。
先日のパラナル公国のマーケットを破壊された一件から、血眼になって敵を探索していた矢先の出来事だ。これで要のベネディクトの行方がわからなくなるとなれば、影響は甚大。
だが今回は、惑星グリーゼでの出来事であったため、霊鬼のアンテナにかかってすぐに『桃源郷』本部に連れ去られた事を突き止めていた。
だが当主の霊鬼了が、すぐにベネディクト救出に動き出さなかったのは、他にも数人の学者が同時に連れ去られたからだった。
『桃源郷』といえば、銀河間を股にかける巨大な組織である。もしベネディクトが目的ではなく、彼らが目的とした学者らと共にいた為一緒に拉致されたとしたら、ベネディクトの命に危険は無いかもしれない。
パラナル公国の闇市が破壊したのは、天の川銀河の組織だと、霊鬼らはすでにわかっていた。
だが、その組織にユリがいて、さらに『桃源郷』にいるという事実までは知らない霊鬼達にしてみれば、この拉致とマーケットへの攻撃の関連は全く関係のないものとなる。
『桃源郷』が、自分達の不利益となるような霊鬼の持つマーケットの破壊を企てる意味がないからだ。
闇市の破壊は、天の川銀河の『帝都』を守るウルティマ公国の第三王子ガスケットの配下による組織によって行われた。
現在のウルティマ公国を束ねる第一王子オイリーは、このガスケットとは犬猿の仲である。
霊鬼とオイリーは、手を組んでいる。オイリーの敵は、すなわち霊鬼達の敵なのだ。
今回のウルティマ公国に被害を及ぼすマーケット破壊が『帝都』ガスケットからの攻撃であるということは、オイリーに対する攻撃が開始されたとも考えられる。
もしガスケットが、ユーレカ公国宰相のベネディクトがこのマーケットに関与している事まで知っているならば、この拉致は霊鬼達にとっても重大な意味を持つ。
だが目的がそうでないとしたら。
『桃源郷』への攻撃は、霊鬼達にとって全く無意味になってしまうどころか、鬼族の主導権争いの中で、霊鬼達は壊滅に追い込まれる可能性さえ秘めている。
それほど『桃源郷』の及ぼす力は、大きいのだった。
そして、そのパワーバランスを利用して動いているのが、ユリという頭脳だった。
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