〆2

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〆2

羅刹に捕獲されてからのロバートの日々は、あっという間に過ぎていった。 羅刹の住む鬼の世界というのは、予想外におもちゃ箱をひっくり返したようなところだった。 ロバートの口さがない恋人のユリがいれば、頭おかしいんじゃないと一蹴されそうな、羅刹は何とも無茶苦茶な色彩感覚の持ち主だった。色々な意味で、ちょっとデザイナーをしていた妹のリアと似ている。 ロバートは以前から、身勝手な者達を寄せつける何かがあるんじゃないかと頭を抱えるほど厄介に巻き込まれる癖があったが、羅刹でまたひとり増えた。いや隣に並ぶウサ耳を合わせると、ふたりか…。 「おい、これから鬼族の総会があるからついて来い!」 羅刹が今日はパッションピンクの装束に身を包み世話係のメイドとともに自室から出てくると、そのまま鬼火を纏わせた牛車のような乗り物にロバートと共に乗り込んでゆく。無駄がないというより、せっかちだ。 書類や様々な交渉事、桃源郷など外の世界との連絡一般はウサ耳が担当し、ロバートは主に羅刹の付き人兼話し相手のような感じとなっている。 羅刹は、頭が切れる。言動は子どものようなのに、滅法強くて岩山のような鬼達を上手に束ねている。牛若丸のような、おそらく女の子なんだろう。ロバートは、怖くて聞けないけれどそうだと思っている。 ただ、鬼族も一枚岩ではないようで、羅刹の首を狙っている妖術を得意とする『霊鬼』一門や闇属性の『夜叉』一門などが、鬼族最大にして最強の軍団『羅』一門の当主羅刹をあからさまな態度で挑発してくる。 羅刹の両親は、物心ついた頃何者かに殺されたといった。そして最近もロバートと同じ役どころにいた鬼が、殺されたという。聞けば羅刹の幼馴染だったようだ。一門の者は、信用に足るがそばに置く気はない。あえて屍を増やすどおりはないだろう。淡々と羅刹は語る。 ロバートは自分が使い捨てには丁度いいのかと思いきや、お前は小心者ゆえ死なぬといわれたものだ。 そんな孤独な立場のしかし最強羅刹を、どうにも憎めないロバートだった。
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