〆3

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「何だ?あいつ」 アラステアが、誰にともなく呟いたが部屋に音が吸い込まれるように消える。 待たされているこの謁見の間の居心地の悪さと言ったら半端ないものだった。 椅子一つないだだっ広い空間自体は、ぐにゃりと歪んで見える。 床もドアもあるのかないのかおぼつかず、サイケデリックな色彩が渦巻く部屋なのか何なのかすらわからないような、不気味な感覚の中で三人は置いて行かれた。 こんな中で長時間待たされたら頭がおかしくなりそうだと皆が思っていた矢先、面談相手である王が目の前に突然現れた。 これまたサイケデリックな派手派手で蛍光色の、何の生地なんだかわからないつるんとした光沢の紫や黒なんかに変化して色がコロコロと光る織物のような装束を着た人物が口を開く。 「待たせたな、すまぬ。桃源郷の主人(あるじ)殿にはいつも良くして貰っている。私がここの主人の羅刹(らせつ)である。礼を尽くしたいのでこちらに案内させた。して、この度は何用でアンドロメダに参った?」 衣装だけでなく、頭には二本の角が見える異形の姿をした(ぬし)の声は女性のように高く澄んだ音色を響かせた。 「我々の住む天の川銀河に、先日バイオテロが仕掛けられました。仕掛けたのは貴方ですよね?それで安全なここに避難方々、交渉しにきたのですよ。戦争は儲かりますから」 アラステアの馬鹿が、ど直球で羅刹に問いかけるのを張り倒したい衝動を抑えながらユリは表情ひとつ変えない。 その代わりロバートの、喉を鳴らす音が聞こえた。 「ほう…桃源郷は、何を売るつもりなのかね?」 そう羅刹が返事をした後、ロバートの剣は羅刹の首を跳ね上げていた。 胴体から切り離された羅刹の首は、コロコロと鞠のように弾んで転がって止まる。 「お主、私の身体を切れるとは相当の手だれだな」 頭だけになっても、面白そうに話しを続ける不気味な笑い声が部屋に響き渡る。 その首をまんじりと見つめ悔しそうなロバートは、こいつは貰い受けたという羅刹の一言であっという間に生け捕られ連れて行かれてしまった。 「さて、君たちの事は歓迎すべきなのかな?」 転がったままの羅刹の首は、やはり愉快そうに残されたアラステアとユリを眺めていた。
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