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第10話:いわゆる撮影でドタバタってやつ
結局、次の打つ手が考えられないまま解散した翌朝・・・
普段は誰も気にも留めない廊下の掲示板に人だかりができていた。
「リンリン面白いことになたある。」
宙奈がポスターを指さす。
「ぱーぱの会社、うちのガッコでCM作るらしいある。」
「ん?宙奈の父さんの会社ってソルトバンク??ずいぶんと思い切ったことするわね。」
どうやら人だかりができていたのはその撮影のポスターで・・・ということだ。
どれどれ・・・
げっ、配役すご・・・
ドラマ『逃げるし、恥だし、役立たずで、ダメなヤツ』の主演二人のスピンオフCM??
制作費に幾ら出すのよソルトバンク・・・
そう、私ですら知っているこのドラマ、通称『逃げダメ』は女子高生の間で爆発的にヒットしたラブコメディである。
まあ、簡単に言えば超内気な男子とグイグイ系の女子との恋愛ドラマだ。
配役は俳優でアーティストの『月野 天』と人気上昇中の女優『赤木 桃華』でそのドラマのスポンサーはソルトバンクというわけである・・・
なるほど、インスタントラーメンのCMと・・・
で、撮影は学校が休みの土日にね~
人だかりができそうだなこりゃ。
しかし、ポスターにはデカデカと、撮影関係者以外は立ち入り禁止の文字が書かれていた。あ、やっぱそうか・・・
その様子を見て宙奈が声をかけてきた。
「どうやらぱーぱの会社の人たちも様子見に来るらしいある。」
「ん!これは!チャンスか・・・立ち入り禁止じゃ無理か~」
あと一歩のところで・・・と残念がる私を見て宙奈が言う。
「リンリン、ファンあるか?ワタシ、エキストラ募集でトモダチ何人か連れてくるようお願いされたある。この手続き踏めば撮影に参加できるある。」
とこっそりパンフレットを渡してくれる宙奈
「ありがとう!宙奈!」
「どういたしましてある。」
これはある意味、ソルトバンク関係者と接触できるチャンス到来である。
放課後・・・生徒指導室
「で、魔鈴と話あったんですが、エキストラで潜入するのはどうですか?」
本間先輩にパンフレット渡しながら先ほどの話をするチャンチー
「悪い、正直興味ないな・・・あんまり流行には乗りたくない。どうしてもなら君らだけで行ってきてくれ・・・」
あくまでクールを装う本間先輩
まあ、性格からしてあんまり興味なさそうだしな・・・
「ま、とりあえず今回の調査は任せた・・・」
本間先輩が、パンフレットをチャンチーに返し、ノート類をまとめて帰ろうとしたところ・・・
ひらひらと何かが落ちた・・・
「あれ?先輩、落ちましたよ・・・」
「え?」
拾って見てみるとさっきチャンチーに返したはずのパンフレットがもう一枚・・・
「あれれれれ・・・おっかしいな~本間先輩~なんでパンフレット持ってるんですか~ひょっとして行きたかったとかですか~?」
メガネの小学生名探偵の真似をしてからかう私
「うるさい!軽音部の関係者からパンフレットもらってきただけだ!」
「あ・・・そういえば、本間先輩、月野天の大ファンじゃなかったでしたっけ?」
「地井―い!!オマエなんでそれ知ってる!!」
驚きの色を隠せない本間先輩
「え?カマかけてみただけですよ。」
しれっ、というチャンチー・・・
「オマエ!!時々性格悪い時あるぞ!!」
真っ赤になって怒り出す先輩。
「まあまあ、先輩、好きな物を好きと認めるのは悪いことじゃないですよ。」
ニヤニヤしながらなだめる私。
「くううう、なんかこいつらにスゲ~弱み握られた感じだ!」
そんなこんなのやり取りで本間先輩の好みがばれた瞬間であった。
その週の土曜日・・・
パンフレットの指示に従い、ネットで登録を済ませた私達は早朝から撮影に参加することとなった。
くそ、朝はやっぱり寒い・・・
しかも、まだ肌寒いこの春先に夏服とかキチクすぎる。
夏の設定らしいから仕方ないのはわかるが・・・
「おお、ドローン飛ばしてる!」
「屋上で二人でラーメン食べるを撮影するらしいな・・・」
本間先輩が言う。
ちなみに私たちは同じく屋上でお弁当食べている役・・・
あ、チャンチー、大橋クンが少し離れた場所にいた・・・何かのツテで参加しているうちの学生のエキストラも何人かいるようだ。
「隣に天様がいる隣に天様がいる隣に天様がいる隣に・・・」
ちなみにかなりの近距離に天様こと月野天とモモちゃんこと赤木桃華がいるので、本間先輩はバグり気味・・・
しかし、さすが俳優さん。寒いのに全く動じない。
「あ~この味、青春だ~!!」
「最高かよ~!!」
屋上で俳優さん二人がドローンに向かって台詞を叫ぶ。
「はいカット!よ~し!別バージョン撮るよ!」
監督さんの指示のもと撮影は順調に進んでいたはずが・・・
「な・・・なんだあんた!!部外者は立ち入り禁止だ!」
スタッフの驚きの声のもと、撮影に似つかわしくない仮面の人物が現れた!
「ジェネラル・ソナー!!ここはバトルものの撮影現場じゃないわよ!!」
「何をボケたことをいうアルか!“後継者”!始末をつけに来たアル!」
ジェネラル・ソナーはなぜか左手に包帯を巻いている。
「敵の幹部が負傷とは珍しいわね。」
「うるさいアル!!くらうアル!!」
お約束通り私にめがけて赤い石を投げつける!
「うわっ!毎回毎回、いきなりナニすんのよ!」
咄嗟に避ける私、しかも奴は二つも水晶を投げつけてきた!!
「天様!」
「モモちゃん!」
「えっ?!」
最悪だ・・・よりによって水晶は俳優二人にぶつかり、瞬く間にモンスターへと変えてしまったのである!
「リザードマンとケツァルコアトル・・・爬虫類系モンスターとはなかなかの素質アルネ。」
喜びの声を上げるジェネラル・ソナー
天様は人間の1.5倍ぐらいあるトカゲ人間リザードマンに・・・
そしてモモちゃんは翼の生えた蛇、ケツァルコアトルに変えられてしまった!
「おのれ!よくも!!」
「天様を!」
ちょ、本間先輩、私情入ってない?
「緑豊かな星々のその力の源よ!私に力を!ミラージュ・フォース!チェンジ!魔装少女001ダイヤモンド・マリン!ブラスター・フォーム!」
「緑豊かな星々のその力の源よ!私に力を!ミラージュ・フォース!チェンジ!魔装少女002サファイヤ・カイナ!ランサー・フォーム!」
すかさず私達は変身した。
「緑豊かな星々のその力の源よ!私に力を!ミラージュ・フォース!チェンジ!魔装少女003アメジスト・チャンチー!アックス・フォーム!」
騒ぎを聞きつけたチャンチーも変身して三人が揃った!
「魔装少女隊見参!!」
「な・・・魔装少女がなぜ三人もいるアルか・・・想定外アル・・・」
焦るジェネラル・ソナー・・・しかし・・・
「おおお。なんかプ〇キュアっぽい!」
「マリン、ダメダメ!それ危ない!」
「ノリでポーズ撮っちゃっただろ!」
「もう~カイナさん好きなくせに~」
「なんだと・・・」
「早くも仲間割れアルか・・・こっちにとっては好都合アル!」
その後のやり取りを見て、あきれるジェネラル・ソナー
「どうやら見かけ倒しらしいアルね。ケツァルコアトル!上空から奇襲攻撃アル!」
ケツァルコアトルが羽ばたき空を飛んだ!
「また、飛行系モンスター!ならば、ダイヤモンド・ブラスターで撃ち落とすまで!」
バズーカを構える私
しかし、動きが素早い上に細くて狙いが定められない・・・
「アホか、何もたついとるんやマリン・・・」
突如現れたヤギピーにどやされる。
「マリン!危ない!」
もたもたしている間にリザードマンが蛮刀を振り下ろそうとしていた。
それを斧で受け止めるチャンチー!
「マリンこいつはあたしとチャンチーにまかせな!その間に空飛んでるアイツを何とかしてくれ!」
「てか、カイナさん、元は天様なのに相手して大丈夫なの?」
「その逆だ、私達がどうにかしないと天様はもとに戻らない!それぐらいの判断はできる!」
私はその言葉を聞いて少し冷静になった。
空・・・そうだ!
私はこの前入手した翼のエンブレムのEGOパーツを思い出した。
早速バックルに装着する!
「換装!ジェット・フォーム!」
おお、入れ換えた途端、コスチュームに飛行機みたいな翼が付いた!
この翼は鳥のように羽ばたくことはなく、文字通りジェットエンジンで空を飛びはじめた!
そして、一気にケツァルコアトルに詰め寄るが・・・
「うわ、攻撃手段ない!!」
「アホー!この前みたくダブルで使わんかい!!」
「そうね!さらにソードのEGOパーツを追加!!ソード・ジェット・フォーム!!」
空中に浮いたままチェーンソーを装備する。
「うらあああああ!!くらええええ!!」
猛スピードで追いかけ、そのままケツァルコアトルの額の水晶を砕く!
その瞬間、エンブレムとモモちゃんに分離!
「おっと!」
モンスター化が解除され、墜落しそうになったモモちゃんを抱き止め、無事に屋上におろすことができた。
一方のカイナ、チャンチー・・・
「ケツァルコアトルはマリンに任せたけど、こちら何とかなるかな・・・」
「そういえば、私達この装備で戦うの初でしたね・・・」
「そうだな。いつもの勢いで言ってしまったが不安はあるな。」
リザードマンと間合いを取りつつ話をする二人
「二対一トハナ・・・多少不利ダナ・・・」
「リザードマン、しゃべれるのか?」
「それより見てください!」
力み始めるリザードマン
「なに!腕が四本になっただと!とはいえ腕が増えたところで大してかわりはない!」
槍で両手付きをするカイナの攻撃を軽々と盾で受け止めるリザードマン・・・
さらに・・・
「なっ!!二連攻撃!!」
二本の蛮刀を連続で振り下ろす!
「ウマクヨケタガ、次ハドウカナ・・・」
「思ったより厄介ね・・・」
「隙あり!」
そこを狙いチャンチーが両手斧を振り下ろすが・・・
「え!」
三本目の蛮刀で受ける!
「守りも鉄壁みたいね。」
「ククク、ソウ簡単ニタオサレルカ!」
「ならば・・・」
カイナが集中に入る。
「コチラカラ・・・イクゾ!」
無防備なカイナをリザードマンが襲撃する。
が!
「見えた!ブルー・ブレイザー!!」
斬撃によってカイナの髪がわずかに斬られたその瞬間・・・
攻撃の一瞬の隙をつき、蒼い炎をまとった槍の一撃がリザードマンの額の水晶を襲う!
「おお!破壊できた!」
その直後、今までマリンしか破壊できなかった赤い水晶はカイナの一撃によって砕かれたのである。
「魔装少女の力によるものですかね・・・」
チャンチーがそう言ったと同時にリザードマンはその場に崩れ落ち、月野天となった。
「とにかく天様が助かってよかった~」
その場にへたり込むカイナであった。
さらに・・・
「ロザリアのしもべ、覚悟するッス!」
どこからともなく084が現れ、ジェネラル・ソナーと戦っていた。
「ふん、幻想界の残党アルか!貴様など片手で十分アル!」
084と互角にやりあうジェネラル・ソナー!
「いくッス!“風刃”」
回転し斬撃を繰り出す084、ジェネラル・ソナーはトンファーでそれをうまくさばいてはいるが、猛攻によって徐々に後退せざるを得なかった・・・
「くっ!片腕はさすがに厳しいアル・・・」
「追い詰めたッス!」
ついに屋上のフェンスに追い詰められたジェネラル・ソナー・・・さらに・・・
「マリン、カイナ、チャンチー!」
赤い水晶を破壊した三人が合流する。
「ついに幹部を追い詰めることができたな!」
「これは圧倒的に私達が有利ね。降参するなら今のうちよ!」
「くっ、ここまで強くなっているとは、誤算アル!かくなる上は・・・」
と言って懐から『何か』を取り出そうとするジェネラル・ソナー
「おっとぉ、やめときなぁ!今はその時じゃないぜぇ!」
咄嗟にジェネラル・ソナー腕をつかんだのは・・・
「貴様は!ジェネラル・クロウ!」
「クロウ!何するアルか!」
「とりあえずロザリア様の命令なんでぇ、今回は助けてやるぜぇ。貸しだからなぁ!」
「く・・・貴様に貸しを作るのは嫌アルが・・・命令ならば仕方ないアル。」
「待て!」
「そういわれて待つバカはいないぜぇ。じゃあなぁ!」
転移魔法を使い瞬時に姿を消すジェネラル・クロウ、ジェネラル・ソナー
「逃げたか・・・」
あと一歩のところで、乱入され逃がしてしまった。
その後・・・先ほどのトラブルはなかったかのように撮影は順調に進み、無事終了した。
とはいえ気が付けば夕方になってしまっていた。
うわああ。結局、ソイルの姿を見つけられなかった~
「お腹すいた~」
そう、昼頃にドタバタがあった為、私達は食事をしていなかったのである。
「撮影用のカップラーメンの余りとかもらえないの?」
「それらもさっさと撤収しちゃったみたい・・・」
残念そうにチャンチーが言う。
「しょんなぁ・・・ラーメン食べたかった・・・」
「ははは。じゃあ、みんなで孫軒のラーメン食べに行くか!」
本間先輩が笑いながらそう応えた。
「賛成!」
「やった、本間先輩のおごりでチャーシューメン!」
「あほか、おごらんわ!しかし、孫軒のラーメン久々だな~」
「ボクも久しぶりっす!餃子もいけますよね。」
「お、大橋クンはサイドメニュー派か~確かにいいなあ。」
「私は、チャーハン、それと青椒肉絲!」
「千晶、そういうところ頑なね~まあ、あそこは何食べてもおいしいからね。」
などと盛り上がる私たち。
腹は減っては、戦はできぬ。
という事で私達はいったん孫軒にラーメンを食べに行くことになった。
しかし、その後、さらにとんでもない展開になるのであった。
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