第4話:いわゆる萌え萌えキュン♡ってやつ

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第4話:いわゆる萌え萌えキュン♡ってやつ

日曜日・・・ 本間先輩の提案で休みを利用して先輩、チャンチー、私は街のメイド喫茶に行くことにした。 「わーい!メイド喫茶~」 「こら!伊藤、遊びに行くんじゃない!調査しに行くんだぞ!」 「え~先輩のおごりじゃないの~?」 「伊藤・・・やっぱおまえ、いっぺん本気でシメないとだめか?」 バキバキと指を鳴らす本間先輩 「ひ~冗談ですう~」 毎度のやりとりをしながら私達は飲食店街の中にあるピンクの壁のファンシーなお店に到着した。 「ここが例のメイド喫茶・・・」 しばし見とれる私達、ここが今回調査対象・・・メイド喫茶『かい・どりーみん』である。 「かい・・・どりーみん・・・なんか初めて入るのになんかすごく嫌な記憶が・・・」 若干青ざめる本間先輩・・・ 「本間先輩、たぶん前世はメイドで、お嬢様にいじめられたんですよ。無理やりセンブリ茶飲まさせられたり・・・」 ボソボソと先輩に向かって何かをつぶやくチャンチー・・・ 「うわああ、それ以上何かを思い出ださせるな~」 錯乱する本間先輩・・・一体先輩に何があった?! 「せ・・・先輩、取り乱す前にお店に入りましょう。」 あまりの錯乱ぶりに焦る私は、入店を促すことしかできなかった・・・ 「こんちゃ~」 「あら、おかえりなさいませお嬢様がた。」 「わーお、マジメイドだ!かわええ。」 ピンク色のメイド服を着たメイドさんが私達を出迎える・・・ファンシー度マックスだ~ 「・・・ってか、女性客私達だけやん・・・」 周りを見ると男性客だらけ・・・ 「お嬢様方・・・どうぞこちらへ・・・」 「おお。特別室・・・VIP待遇やわ~」 と奥の個室に通された。 しかし・・・個室に通されるや否や・・・ 「アホか!ここは事務室兼待機室だ!」 急に口調が変わるメイドさん。 「ってか、いくらバイト初日だからって正面から堂々入ってくんな!裏口から入れ!連絡しただろが!」 急に乱暴な態度になるメイドさん・・・ 「へぁ?」 「あんたらでしょ、募集できた子たち・・・マジ忙しいからずーっと本部にバイト募集頼んでたのに、対応遅いっーの!」 「は・・・はあ・・・」 半分キれ気味に話し始めるメイドさんに唖然とする私達・・・ おそらく忙しくなったのは、バイトである子が失踪したからであろう・・・ まあ、その後ハーピーに変身させられるというエラい目にあっているのだが・・・ そんな私達をよそにメイドさんは再び話を続ける・・・ 「私はメイド長・・・いわゆるここの店長の甲斐 夢子(かい ゆめこ)だ。マジ嫌だが、店ではショコラちゃんかメイド長で呼ぶ事!つーか・・・おもてで本名言ったら殴るからな!」 この人、本間先輩の比じゃないガチヤンキーバリバリの女性だった・・・ しかも、この人そそっかしいのか完全に誰かと勘違いしてる・・・ 「いえ、私達は・・・」 と私が言いかけたところ、チャンチーと本間先輩が制す。 (バイトと勘違いされた方が店の中に入りやすい、このまま話合わせろ。) 「てか、時給高いからつられてきたんだろ、ホント最近のJKはがめつくて困る・・・」 「そ・・・そうですよね~」 言われた通り適当に話を合わせる私・・・ 「でしょ・・・はい!そこの一番威張ってるやつ!すぐ着替えて接客っ!他二人は順番に教えるからとりあえず店で客のふりして接客の様子を勉強してろ!以上!」 「あ・・・あたし?!」 え~という事で・・・本間先輩が即実践投入されることになったわけで・・・ とはいえ、いきなり他のお客さんを任せるわけにもいかず・・・練習がてら私達の接客をすることになった。 「お・・・おかえりなさいませ・・・お嬢様がた・・・本日は・・・わ・・・わたくしマシュマロが、お・・・おもてなしいたしますぅ~」 ひきつりながら営業スマイルする本間先輩・・・ 「素敵です。笑」 「先輩かわちい。ぷ、マ・・・マシュマロちゃん・・・笑」 ピンクのフリフリのメイド服に身を包んだ本間先輩が登場し、接客をし始めた。 笑いをこらえるのに必死な私とチャンチー 「一生の恥・・・だ・・・もういいだろ、何とか理由つけて帰れよ!」 「いいえ、先輩・・・じゃなかったマシュマロちゃん!調査続行です。今さらここで帰るわけにはいきません!」 きっぱりと断るチャンチー・・・ 「地井!お前、ここに来て裏切るのか!」 チャンチーも性格が悪い、ここぞとばかりに正当な理由つけて居座ろうとしている・・・ ・・・というよりもこの状況を一番楽しんでないか? とはいえ私もこの面白い状況で帰らされるのが嫌なので援護射撃をする事に・・・ 「ショコラさ~ん、この新入りメイドさんすっげ~態度、悪いんですけど~」 「ちょ・・・伊藤、おま・・・」 「マシュマロちゃん、しっかりとおもてなししてくださいね~」 飛び切りかわいい声で本間先輩に近づいた瞬間・・・ ドスのきいた声で 「てか、新人・・・いい加減な接客したら爪はぐぞ・・・」 と脅しをかけた。 「ひ」 いつも圧をかける側の先輩が、声にならない悲鳴を上げたのを私は見逃さなかった。 メイド長のギャップこええ・・・ 「あ“~疲れた・・・あのメイド長マジで私をこき使いやがる~」 目の前にはダルンダルンに伸びきった本間先輩がいた。 結局・・・私達二人が交代する間もなく『かい・どりーみん』は、閉店時間を迎えてしまったのである。 「で、先輩、失踪事件のヒントになりそうなもの見つかりました?」 チャンチーがしごくまっとうな話をするが、それはこの状況見たら無理だろう・・・ 「バイトが忙しかったから無理・・・」 予想通りの回答 「・・・無能」 バキッ 「いてっ!」 ボソッとついた私の悪態を聞き逃さない本間先輩・・・地獄耳だ! 「なんてな・・・とりあえず明日の開店準備をするとかなんとかいって合鍵借りてきた。こいつを使って閉店後に入って後で調べてみるか・・・」 「え・・・やってることはかなりまずいのでは・・・」 私は若干不安だったが、でもこうでもしない限り調査が進まないだろう。 「今、夕方の閉店時間だから、店長が会計処理をしたら夜は完全に人がいなくなるらしい・・・夜は営業が終わる・・・そこが狙い目みたいだな。」 「では改めて夜に集合ってことでいいですか?」 「そうしよう!10時に再度ここに集合だ!」 「了解!」 ・・・という事で私達三人は一旦解散することになった。 そして夜10時より少し前・・・ 私達三人は再びかい・どりーみんに集合した・・・ 「ここ、警備システムとかないですよね・・・」 「ああ、調べた限りではそこまでのシステムはないようだ・・・」 ガチャ・・・ 本間先輩が合鍵を使って店の中に入る・・・ 昼間と違って『かい・どりーみん』は不気味なほど静まりかえっていた・・・ 「とりあえず何か怪しげな物がないか探してみるぞ・・・」 接客するフロアはいつもと変わらなかった。 「とりあえず事務室に行ってみるか・・・」 私達は店の奥・・・待機室兼事務室に向かった。 「ん?誰かいる・・・」 「あれ!?メイド長が倒れている!」 事務室のソファーにもたれかかっているメイド長・・・ 慌てて駆け寄ろうとすると・・・ 「魔鈴!避けて!」 チャンチーの警告と同時に、急に背後から黒い布をまとった人物が殴りかかってくる。 「うわあ!」 どこからともなく現れた人物に驚いてしまう。 しかも黒い服を着ているのか暗闇にまぎれてハッキリしない・・・ただ唯一ハッキリとわかったのは暗闇と同化したような真っ黒な仮面をつけていた。 「見られたからには、始末するしかないアルね・・・」 黒い服の人物は赤い水晶を取り出し、私にむかって投げつける! 「うわあ!何すんのよ!」 私はすんでのところで避けたが、その先にはメイド長、甲斐さんが! 「あっ!」 「私が相手をする時間がないアル、ここはラージ・スタック・ビートル・・・オマエに任せたアル・・・」 甲斐さんの額から眩しいぐらいの赤い光が放たれた! 「まさか!!はじめから甲斐さんが狙いだったの!?」 あまりの眩しさに目を閉じてしまったが、開いた時には甲斐さんの姿はなく、目の前には 「クワガタ??」 私以上の背丈を巨大なクワガタが現れた! 「秘密を知ったからには、オマエらには死んでもらうアル・・・」 良く聞くセリフを言い放ち巨大クワガタの傍らに立つ黒服・・・ いやいや・・・自分から秘密ばらしてない? 「一体お前は・・・」 「死ぬ前に名前ぐらいは教えておくアル。私はロザリア三魔将のジェネラル・ソナー・・・地獄でその名前を思い出すアル。」 ジェネラル・ソナーと名乗る人物はそういって闇の中へと消えていった。 残ったのは巨大クワガタことラージ・スタック・ビートル・・・ 「よし、変身して応戦するぞ・・・っていってもグーン神官いないんじゃ、変身できない!」 本間先輩が焦りだす。 「私も変身できません。」 続けてチャンチーも言う・・・ そうか、そういえばこの二人はグーン神官が展開したドリーム・フィールド内・・・つまりは夢想界でないと変身できないんだった・・・ 「ここは、マリンお前に任せだぞ!」 「え?!大丈夫かな??と、とにかく二人は避難して!」 咄嗟にプロトタイプ・ミラージュ・トライバーを身に着け、バックルに砲台のエンブレムを装着させる。 「ダイヤモンド・マリン・ブラスター・フォーム!」 なんとか変身できた! 「なんやマリン、ワイはフィールドなしでも召喚されたで・・・」 理屈わからないが、ヤギピーはなぜかこちらの変身に合わせて召喚されるようになってしまった・・・ 「おいおい、こんなめっちゃ狭いとこで戦うんか?」 そう・・・私達はまだメイド喫茶の中・・・ヤギピーの指摘はもっともだ・・・しかし、こいつを屋外に出すわけにはいかない・・・ 「とにかく額の赤い水晶を狙うわよ!」 至近距離からブラスターを放とうとするが・・・ 「アホ、マリン隙だらけや!」 鋭い顎で私を挟もうとするスタック・ビートル 「わー、チャージできない!」 「あたりまえや、近接武器やないんやから・・・」 近接武器?そうか! 毎回ぶっつけ本番になるけどひょっとしたら使えるかも! 一旦バックルから砲台のエンブレムを取り外し、この前手に入れた剣の形をしたエンブレムを取り付ける・・・すると・・・ 「おお!新しい武器やんけ!」 私の目の前には剣・・・ではなく 「これってチェーンソー?!」 そう、よく森林伐採の人が用いているチェーンソーを片手持ちの剣のようにアレンジした武器が目の前に現れた。 「何か知らんけど流行に乗ってるんやな。チェーンソーウーマ・・・」 「はいはい、また危ないからそれ以上言わないでね・・・」 かろうじて巨大クワガタの挟み込み攻撃をかいくぐり、チェーンソーを握った私は・・・ 「ヒャッハァ!!」 自分でもどこからでたのかわからない声をあげて振り下ろす! 「ねえさん。ノリノリやな~」 ギャギイイン 当たった瞬間にチェーンソーの刃が回転し始め、見事に赤い水晶を砕いた。 その瞬間、巨大クワガタは甲斐さんの姿に変わった。 「ふう、よかった・・・」 なんとか被害は最小限に食い止められたようだ・・・ 「マリン、見てみい・・・」 「これは?」 ヤギピーが示す場所にはまた似た大きさのエンブレムが転がっていた。 それは・・・バイクにも見えるような乗り物を模ったものであった。 その後・・・ 気絶したメイド長の介抱をチャンチーに任せ、私と先輩は事務所に妖しいものがないか探ってみることにした・・・ 事務所は仕事用の書類ぐらいしかない・・・ 唯一気になったのは床に名刺が落ちていたことぐらいだった。 名刺には 『ソルトバンクグループ専務 土丘春人』 と書かれていた。 「まあ、お店だし、名刺ぐらい落ちてるか・・・」 「伊藤・・・何かあったか?」 「全然、あやしいものはなかったで~す。」 「何だ・・・あんなヤバそうなやつが出てきたのに、結局怪しいものは見つからなかったか・・・」 その時の私は重大な事を見落としてしまっていた・・・ それはなぜか・・・赤い水晶を私に投げつけたジェネラル・ソナーの事が気がかりだったせいである。
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