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第9話:いわゆる電話の内容ってやつ
そして、電話から再び『死にたい夜』が流れ、本間先輩がそれを取る・・・
声の主はおなじみ獅子神さん。
『調査して色々と分ったんだが、すぐに探偵事務所に来れるか?』
「ああ、今から行く!みんなはどうする?」
「一緒に行きます。」
全員で事務所に行くことになった。
例の倉庫街・・・
「というか、流れで一緒に来ちゃいましたが、ボクも同行しちゃって大丈夫なんすか・・・」
「まあまあ、もはや無関係じゃなくなったし、大丈夫っしょ。」
心配する大橋クンに対してあっけらかんと返事をする本間先輩・・・
ほんとにいいのかな・・・と考える間も無く、らいおん探偵事務所に到着した。
「お、来た来た。しかも、今日はまた人数が増えたな~」
「お邪魔するっす。本間さんの後輩の大橋っす。」
元気に挨拶する大橋クン。
「ああ、獅子神だ。よろしくな・・・ん?」
「どうかしたか?」
「いや。見間違いか・・・なんでもない。」
珍しく変に取り繕う獅子神さん。だが、それどころではない。
「で、電話の件、何が分かったんだ?」
「まあ。立ち話もなんだ。座って話そう・・・」
私達は応接エリアに通された。
「さて、話が途中になってしまったこの前の刑事の件だ。怪しいと思って、さらに詳しく調べてみようとしたんだが・・・俺の知る限りでは如月刑事は失踪・・・というか存在すらしていなかったような扱いになっている。警察の在籍簿には姿も形も無い。」
「!!」
「本来ありえない話だが、何かしらの力でもみ消されたようだ・・・アイツは何者なんだ?」
「そ・・・そんなこと、わ・・・私たちが、き・・・聞きたいわよ・・・」
知っているが、知らないふりをして焦る本間先輩・・・
めっちゃ額に汗かいてるし、ひょっとして演技・・・ヘタ?
如月刑事ことジェネラル・クロウが力によってデータや記憶を操作した・・・
なんとなく私達は状況を把握しているが、獅子神さんにそれを話すわけにはいかない。
ま、話したところで信じてもらえないだろうが・・・
「ちなみに、井狩谷刑事は捜査中に負傷し、病院へ、検査後、異常なし・・・結局『トクニ』に復帰したらしい・・・」
井狩谷刑事に大きな怪我がなかったことは安心した・・・けど結局同じ部署所属なんだ・・・
ひとりあの部署とはなんとなくカワイソウになってきた・・・
「まあ、刑事さんたちの状況はこんな感じだったが、もう一つ、この前話しそびれたことがあった・・・」
「今日はそっちがメインで呼び出したってことね。」
「そうだ。」
まあ、話の流れからして、そういう事なんだろう。
再び獅子神さんが話はじめる・・・
「ちなみに『かい・どりーみん』と『ジム』の共通点はどちらもソルトバンクグループだったことは話したよな。」
「そうね。そこまでは私達でも調べてわかったわよ。」
「じゃあ、そこの総責任者が共通である話は・・・」
「もちろんそんなこと知らないわよ。」
本間先輩・・・そこ堂々と言う所かね~
「土丘 春人だ。」
「あれ・・・どこかで・・・」
そう、なぜか私は初めて聞く名前ではなかった。
「ん?まさか魔鈴知り合い?」
気が付いたチャンチーがとっさに聞き返す。
「いや~『かい・どりーみん』の床に名刺が落ちてたもんで・・・」
「おい!どうしてそれを先にいわん!」
「えへへ・・・無関係かと思った・・・」
「『えへへ』じゃないだろ!やっぱりシめとくか~」
「ひぃ・・・」
指をぽきぽきならしながら近づく本間先輩・・・コワイ・・・
「ちょっと!先輩!事務所ですよここ!でも、その程度なら別におかしくないのでは・・・」
すかさずフォローに入るチャンチー、ナイス!
「ま、まあ、確かにな・・・責任者なら出入りする可能性もあるか・・・」
奇跡的に本間先輩の怒りを鎮めることができた。
「えーと、続きいいか?」
再び話を続ける獅子神さん、一応待っててくれたみたい。
「で・・・ここからがどうも怪しい・・・この男、どこからともなく現れ、急遽昇格し、今や社長に次ぐナンバーツーの専務の地位にいる。さすがに能力重視のソルトバンクとは言え、この出世は急すぎておかしい・・・俺は何か裏があるかと踏んでいる。」
「ふーん。さすが名探偵ね・・・」
珍しく感心している本間先輩・・・
まあ、今の失踪事件に関与しているのであれば当然、裏はあるだろう。
しかも、獅子神さんでも想像のつかない裏が・・・
「これは俺の直観でしかないが、一応警告しておく・・・君らがこの件これ以上首を突っ込むのは危険だ。調査は俺に任せろ。特にこの土丘・・・今は確証がないがマフィアのような危険な組織とつながりがあるに違いない。」
確かに獅子神さんの忠告はもっともだ・・・ロザリア一味はヘタをすればマフィアより危険な存在かもしれない。
なにせこの世界の人間でないため、常識も通用しない者たちだから・・・
「ちなみに写真とかあったりするんすか?」
深刻な表情をする私達の間からひょっこり顔出す大橋クン、なかなかナイスな質問である。
「あるぞ。まあ、会社重役である以上、普通にネットで公開されているようだ・・・」
「どれどれ・・・」
私達は獅子神さんがタブレットに映し出した写真を一斉に覗き込んだ・・・
「!!!!」
その瞬間私達は驚きを隠せなかった。
そこにはスーツに身を包んではいるが、まごうことなき我らが宿敵”バキバキ皇帝”こと”ソイル神官”その人だったからである。
(ソイル!!まさかこんなところにいるとは・・・アイツ・・・ここまでたどり着けないとタカをくくったのか!!)
静かにつぶやく本間先輩・・・
「??知り合いか??」
「いや・・・」
危ない・・・あまりのことにうっかり話しそうになる。
「ん?この男どこかで見たような、見てないような・・・」
不意に大橋クンが反応する。
「え?」
あまりの事に声を出す私・・・
「あ、やっぱり勘違いっす。」
「おーい!」
思わずツッコミを入れてしまった。
「ははは、まあそういう事もあるさ。」
なぜか笑う獅子神さん
失踪事件とバキバキ皇帝、ソルトバンクグループとロザリアの部下・・・
それらが微妙につながり始めた・・・
ピピピ・・・どこからともなく電子音が鳴り始める。
「何だ?このアラーム?」
本間先輩が不快そうに反応する。
「あ、悪い。残念ながら今日はここまでにしてくれ。次にやることがあるんでね。」
と唐突に話をぶった切る獅子神さん。
「次のお客さんとの打ち合わせか何かですか・・・」
不思議がるチャンチー
「いや、まあそういう事じゃない・・・まあ、プライベートなことで・・・」
若干そわそわし始める獅子神さん。
「はあ?まだ話、途中なんだけど!」
半分キレ気味で反応する本間先輩・・・
「悪いがこっちはもうこれ以上話すことはない。Violet Sheepのオンラインチェキ会の生配信が始まるんだ!今日はおしまい!!」
「なに~!私らの仕事とどマイナーな地下アイドルの生配信どちらが重要なんだ!」
さらに怒りマシマシの本間先輩
「むろん生配信じゃ!それに『どマイナー』とはなんじゃ!伸びしろがあると言え!これ以上Violet Sheep侮辱するとさすがに怒るぞ!帰れ!」
「ひでえ・・・私らはどマイナー地下アイドル以下か・・・」
と・・・半ば無理やり追い出される私達・・・
まあ確かにここまで情報が得られたならまずは良しとするしかないか・・・
取り敢えず、帰りながら次の作戦を練ることにした。
「やはり、ソイル・・・こいつか!もう、諸悪の根源はこいつで確定だな!」
本間先輩の言葉にうなずく私達
「しかし、無理やり引きずり出すわけにもいかないですし・・・気になるのはこの事件とどうかかわっているかなんですよね・・・」
チャンチーが続く・・・
「なるほど、ボクも今回の事件の状況がある程度把握できて良かったっす。不明な部分が多いっすけどね。」
まあ、急に連れてこられた大橋クンはそうだろう・・・逆に妙に落ち着いている点が気にはなるが・・・
「で、これから私達どうするの?」
「・・・」
「え・・・なんでみんな黙っちゃうの?」
不意に私が言った言葉で全員口を閉じてしまった。
黒幕が判明しても、どう近づくのが最適なのかわからないのがもどかしい・・・
しかし・・・思わぬところでチャンスは来るものである・・・
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