夏の終りに、あの場所で……

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「ああ、鈴木さん。そっか、もう交代の時間か」 「そうだよ。君の休憩時間は終わり。ほれほれ、さっさと働いてきな」  手に持っていたお菓子とお茶のペットボトルをテーブルに置き、彼女はニヤニヤしながら右手で「シッシッ」の仕草をしてみせる。 「分かったよ。それじゃ、ごゆっくり」僕はパイプ椅子から立ち上がった。 「おう」  鈴木さんの声を背に、後ろ手で休憩室のドアを閉める。  そう。  今年で見附海岸詣でをやめようと思った大きな理由は、この人の存在だ。たまたま同じオンゲをやってることが分かって意気投合してしまった。一緒にプレイしたことも少なくない。  ぶっちゃけ、僕は彼女が気になっている。そして……彼女も僕のことを意識しているような素振りを見せていた。  それまで僕は、ずっと好きな女の子はいなかった。初恋の「マナ」のことがずっと忘れられなかったのだ。十年も引きずってるなんてキモいよな、と自分でも呆れる。でも……  ここにきて、ようやく僕の心を動かす女性が登場したのだ。だから、見附海岸に行くのは今年で最後にしようと思う。そして心に区切りをつけたら、鈴木さんに告白することにしよう…… ---
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