夏の終りに、あの場所で……

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 青い空を背景に、容赦なく照りつける日差しが見附島(みつけじま)を浮かび上がらせていた。周囲を切り立った崖に囲まれたこの島は船に似た形をしていて、軍艦島と呼ばれることもある。  暑い。9月も下旬だと言うのに、海水浴してもいいくらいだ。こんなに暑いと冬になるのが待ち遠しくなってしまう。だけど冬になったらなったで、今度は夏の暑さが恋しくなるのだろう。つくづく人間なんて勝手なものだ。  それでもこの頃はさすがに朝晩かなり涼しくなってきた。あれだけうるさかった蝉の声も、もうほとんど聞こえない。やはり夏の終りは着実にやってきているのだ。  連休ということもあり、毎年ここは人通りがそこそこある、の、だが……  今年も、僕の待ち人は来ない……  と思った、その時。 「!」 「NOTOえんむすびーちの鐘」の前に、麦わら帽子を手に持った女性が一人。しかも……僕のよく知った顔の…… 「鈴木さん!」  思わず僕は声をかけた。 「……織田くん!?」  間違いない。鈴木さんだった。目が真ん丸になっている。 「鈴木さん、ここで何してるの?」 「いや、人を待っててさ」 「……!」  いきなりハンマーでぶん殴られた気分だった。
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