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夏の国の終わり
「さあ行くか」
「おう」
2人の隊員は、飛行機に乗り、飛び立った。
「半年に一度の夏の国のパトロール、今回は自分らが受け持つことになったわけだ」
「うん」
2人の会話は続いていく。
「今からおよそ5百年前、地球に大規模な隕石落下があったんだな」
「ああそうだな。落下地点にいた人々は多大な被害を受けたそうだけど、それ以外の地域の人達は小さい地震程度の揺れを感じたのみだった。だが、地球の運行が大きく変わってしまった」
「これまでの地球は自転の作用で昼と夜が交互に訪れていた。しかし、隕石落下の影響で自転が止まってしまった」
「いや正確には地球が太陽の周りを公転している間に地球は同じ面を太陽に向けている状態となった。月と同じだな」
「1年に1回、公転と共に自転しているということか」
「その結果、地球から見て太陽は常に同じ場所で止まっている状態となった」
「そして、太陽が真上に見える所は夏極と名付けられ、その周辺は灼熱地獄となった」
「その反対側は冬極で、その周辺は酷寒地獄だな」
「そしてそれらの間は温暖な気候となり、人類はみなそこに移り住んでいった」
「地球は太陽の存在する方向から延びる軸が夏極と冬極を通る形となり、その軸と垂直に輪切りする形で、夏の国、春の国、秋の国、冬の国と区分されていった。人々が居住できるギリギリの所を夏の国と春の国の境とされた。秋の国と冬の国も同様に。居住する地域の中間が春の国と秋の国の境だな」
「我々は常に同じ方向に太陽を拝みながら暮らしている。当たり前の事だな。これがかつては太陽のある昼とない夜とが交互に続いていった。我々には想像できない現象だな」
「しかしそのために大半の動植物が絶滅した。昼起きて夜眠る。その逆の生物もいたけど、そういった事ができなくなったからな。その後現在の環境に適する事ができるようになった生物が新たに進化して生じてきた、か。昔の生物は我々人類がかつての環境を維持させて動物園や植物園や研究所で保護されているんだな」
「今の我々人類は外がずっと昼で、住まいの中で活動している時間と睡眠する時間を規則的に決めている。かつての一日、一週間、一ヶ月、一年といった単位をしっかりと維持しながらな」
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