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図星だった。返す言葉が見つからず、お礼だけ言って、出版社を出た。
話された内容は的を射ており、鈴村の頭に残った。思い当たる節は多かった。
鈴村は何をしても心の底から嬉しかったり、悲しかったりする経験をしたことがなく、そういうものだろうと片づけていた。
感情を出すのが苦手というのも何となくわかる気がした。笑うのは好きではないけど、周りが笑ってほしそうなときは笑ったり、悲しんでほしそうなときは一緒に悲しむようにしている。
周りに合わせて、正解だと思う行動をとるようにしてきた。
そんなことばかりしていたため、自分の感情というのが分からなくなった。
また、鈴村は自分の小説を否定されはしたが、その一方、こんなものだろうと小説を書くことを諦めきれそうな気持もあった。
そう思えることが鈴村にとって余計に悔しく感じた。こういう点が他人事だと思っているのだと……。
しかし、一区切りをつけると決めていたので、学校に勉強をしに来たのだったが、身が入らなかった。
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